年々増加中!マンション管理適正評価制度とは?メリットと注意点

「マンションは管理を買え」―。これはマンション選びの際によくいわれることですが、どうやって管理の品質を知ることができるのでしょうか。答えの一つに、一般社団法人マンション管理業協会が創設した「マンション管理適正評価制度」の利用があります。これはマンションの管理状態を全国共通の基準で評価し、その結果を「マンション管理適正評価サイト」で公開し〝見える化〟する仕組みです。もともとは区分所有者がマンションの管理状態を客観視し、必要な改善策を講じるための〝みちしるべ〟として活用することが狙いですが、マンション購入予定者が物件の管理状態を判断する材料として利用することも可能です。今回の修繕成功Magazineでは、このマンション管理適正評価制度で適正評価を受けるメリットと申請時のポイントを詳しく説明します。

目次

マンション管理適正評価制度とは―マンション管理の良し悪しを評価


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図出典:マンション管理業協会HP

管理の良いマンションとはどのようなマンションでしょうか。

ソフト面の管理では管理組合が適切に運営されているマンション、管理費の滞納がなく修繕積立金も不足していないマンションといえるでしょう。ハード面では建物の大規模修繕工事や廊下・外構のメンテナンスと清掃が行き届いているマンションが管理の良いマンションです。住み心地が良くて将来にわたり価値が下がりにくく、売却時には相場以上の価格での取引が期待できるので、管理の良いマンションは『資産価値の高いマンション』といえます。

では、その管理状態はどうやって判断するのでしょうか。

マンションの購入を考える時、購入予定者はマンションの築年数や駅からの距離、管理費などの詳細をインターネットや不動産会社を通じて調べます。しかし、管理に関する情報は購入を決めて契約する直前に不動産会社による「重要事項説明」で知るのが一般的です。

購入を決定する前に詳しい情報を得たい場合や複数のマンションを比較検討したい場合は、管理している会社に業務の内容などについて問い合わせる他、マンションを直接訪問して総会議事録や長期修繕計画を閲覧したり、近隣の評判を聞いたりする方法があります。しかしそのためには時間と労力がかかり、遠方のマンションであれば何度も訪問することは難しいのが現状です。ここで役に立つのが「マンション管理適正評価制度」です。この制度ではどのような点をチェックするのか見てみましょう。

【参考】マンションみらい価値研究所「中古マンションの買主に管理情報が伝わらない理由」

図2 6段階でマンションの管理状態を評価.webp
出典:マンション管理業協会HP 管理状態を6段階で評価

<こちらの記事もご参照ください>
マンション管理を市場価値に反映させる新制度|マンション管理適正評価制度とは

評価項目は管理状態を下記の五つのカテゴリーに分類し、ソフト面(現在の管理組合など)とハード面(建物/設備の維持管理)の両面からの30項目について審査します。そして、管理業務主任者やマンション管理士など資格保有者が6段階・100点満点で評価し、60点以上で良好評価の「三つ星」、90点以上で最高評価の「五つ星」をマンション管理適正評価サイトに表示します。

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出典:マンション管理業協会HP
「マンション管理適正評価制度 登録情報項目」

【評価項目】

1.     管理体制(20点)

管理組合運営の基本的事項に関する項目―管理者の設置、総会の開催、議事録の作成、管理規約の整備状況など。会計と業務監査機能を強化するための監事の選任といったポイントをチェックします。管理者や監事が選任されていないと5点減点、直近5年分の総会議事録が保管されていないと5点の減点です。

2.     建築・設備(20点)

長期的な維持管理体制に関する項目―法定点検の実施、長期修繕計画の有無、修繕履歴の保管など。建物を健全に維持するためには、定期的な保守点検と適切なタイミングでの計画修繕工事が必要です。法定点検を基に建物・設備の経年による機能維持、劣化、汚破損等について、定期的かつ継続的な点検が行われているかチェックします。配点が高いのは「長期修繕計画の作成」の10点と、「直近5年間の共用部分の修繕等の竣工図書の保管」の10点。「長期修繕計画書なし又は総会承認されていない」場合は5点減点されます。

3.     管理組合収支(40点)

安定的な財務基盤に関する項目―管理費・修繕積立金の会計収支、滞納管理費等への対策、修繕に関する資金計画の状況など。管理費等の確実な徴収は、管理組合がマンションの適正管理を行う上での根幹です。長期修繕計画に基づく資金計画の設定もチェック。均等積立方式で「計画期間の推定工事費よりも積立金累計額の方が多い+管理組合の年度収入額が長期修繕計画上の年度収入どおりに徴収」には12点配点されます。管理費会計と修繕積立金の区分経理がなされていないと5点減点、修繕積立金の額が著しく低い場合も5点減点です。

4.     耐震診断(10点)

耐震関係の実施状況と結果、改修計画の予定の有無―新耐震基準が適用されていない(1981年5月31日以前に着工した)マンションは耐震化が急務です。耐震診断実施後の結果が「問題無し」の場合や耐震改修工事を実施済みの建物は安全性をチェックし評価します。

5.     生活関連(10点)

環境づくりに関する項目―設備等異常時の緊急対応、消防訓練の実施、防災マニュアル等の整備状況など。消防訓練が実施されていないと5点減点です。

五つのカテゴリーのうち「管理組合収支」の配点が40点と最も高く設定されているのは、大規模修繕工事に備える修繕積立金の確保が老朽化対策や資産価値の維持に直結するからです。「耐震診断」に関しては実施の有無を評価する他、結果を踏まえた改修計画の予定もチェックの対象です。10点満点で初めて「良好」と評価されます。

マンション管理適正評価サイトへの表示期間は登録完了(公開)日から1年間。評価の高いマンションは良い状態を維持するため、評価が低いマンションは改善目標を設定して管理組合の活動を活性化するため、年に1回のチェックを継続し情報を更新します。

マンション管理適正評価制度の背景―管理不全マンション

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出典:国土交通省住宅局「マンションを取り巻く現状と課題」「高経年マンションストック」

この制度が創設された背景には、マンション建物の老朽化が進むものの管理が行き届かない「管理不全マンション」の増加があります。「管理不全マンション」とは、理事会役員のなり手がおらず理事会が機能不全に陥り、空き部屋の増加から管理費の不足や修繕積立金の不足で大規模修繕工事に着手できず、劣化が進行し周囲に危険を及ぼす恐れがあるマンションです。
不具合を放置して外壁の剥落や鉄筋の露出、コンクリートの爆裂、給排水管の劣化などに至ると、対応にはさらに多くの時間と金銭的コストが必要になります。マンションの価値は低下し、売却したくても思うような価格では売れず、建て替え費用も捻出できず、廃墟化の一途をたどることになりかねません。管理不全マンションは区分所有者個人の資産価値だけでなく、安全・安心なまちづくりを進める国や自治体にとっても深刻な影響を与える問題となっています。

マンション管理適正評価制度を活用するメリット―適切な管理を促進

図5 制度利用のメリット.webp

出典:マンション管理業協会HP「マンション管理適正評価制度利用のメリット」

マンション管理適正評価制度は管理状態を〝見える化〟して適切な管理を促し、管理不全マンションの増加を抑制することを目的にスタートしました。下の表1は、マンション管理適正評価制度を利用する主なメリットです。

まず、マンション管理組合が総会決議を経てこの制度に登録することが、健全な組合運営や計画的な修繕実施の第一歩となり得ます―(1)。そして評価の結果、現時点での管理面の強み・弱みが明らかになれば、管理組合が評価等級を向上させようと活発に動きだすことが期待できます。管理会社も積極的に関与し、劣っている部分の等級評価を上げていくよう組合に働きかけるようになるでしょう―(2)。

さらに、マンション管理適正評価の結果が「マンション管理適正評価サイト」に公開されると、管理状態が市場価値として売買・流通、融資、保険等に反映されやすくなります―(3)。その結果、管理の良いマンションが市場で高く評価され、売却時にはより高く・より早く売れるとなれば―(4)、区分所有者がマンション管理に係る活動や費用の支出について前向きになり、良好な維持管理のサイクルが回るようになります。

このようにマンション管理適正評価制度を活用することで、購入予定者だけでなく現在の区分所有者にとっても大きなメリットが生まれるのです。
表1_マンション管理評価適正評価制度を利用するメリット.JPG
管理状態を総合的にチェックし改善点を早期発見・早期対処することで、マンションの劣化リスクを低減することができます。健康管理のために行う人間ドックと同じですね。マンションの老朽化と居住者の高齢化という〝二つの老い〟にしっかり向き合い、マンションも人も元気な状態での長寿を目指しましょう。

■ 知っておきたい!マンション長寿命化促進税制 ■

国は2023年度の税制改正で新たに「マンション長寿命化促進税制」を創設しました。これはマンションの長期的な維持・管理を支援するため、要件(※)を満たしたマンション建物部分について、工事翌年度の固定資産税等の一部を減額するなどして長寿命化を推進しやすくするものです。減額割合は1/6~1/2の範囲内で自治体の条例で定めます(表2参照)。

※減額の申告には国の「管理計画認定制度」(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(「マンション管理適正化法」)第5条の8)による管理計画認定マンションであり、住戸数が10戸以上で築20年以上経過し、過去に管理計画に定めた大規模修繕工事を行ったものであること、2025年3月31日までに長寿命化工事が完了すること、工事完了後3カ月以内に申請すること、などの要件があります

管理計画認定マンションの認定審査は自治体が行いますが、実はこの審査項目はマンション管理適正評価の評価項目が大きくカバー・補完しています。つまり、マンション管理業協会に適正評価と管理計画の認定を一括申請すれば、二つの制度の審査をワンストップで受けることができ、管理組合は、審査結果を以て自治体に管理計画認定マンションの申請を行うことができるのです。

表2_神奈川県減額割合.JPG
表2_東京都.JPG

申請時のポイント

最後にマンション管理適正評価制度への申請の流れを説明します。

図6 登録申請方法 .webp
出典:マンション管理業協会HP

①   管理組合は、評価者(評価者が所属する管理会社を含む)に
    マンション管理適正評価制度における当該マンションの事前評価を依頼します

②     評価者は、事前評価の結果を管理組合に通知します

③     管理組合は事前評価の結果を踏まえ、当制度への登録申請、情報開示について総会で決議します

④     総会での決議を経て、申請者は、適正評価制度への登録申請を評価者に委任します

⑤  評価者は、マンション管理業協会の指定口座に登録料の払い込み(銀行振込)をします

⑥    マンション管理業協会は、登録料の入金確認を以て登録を完了させ、
        当該マンション情報を適正評価サイトに公開し、評価者にその旨通知します

⑦    評価者は、登録完了・公開通知を受け、その内容を確認し管理組合にその旨通知します
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登録完了・登録証の発行

図7 登録証イメージ.webp
登録証のイメージ

マンション管理業協会のシステムに管理情報を登録し、データ蓄積・更新・サイト公開等を行うためのシステム登録料は次の通りです。

<適正評価制度のみ申請する場合> 
適正評価制度:登録料 5,500円(税込)+評価・申請手数料※1

<適正評価制度+国の管理計画認定申請する場合> 
適正評価制度:登録料 5,500円(税込)+評価・申請手数料※1、
管理計画認定制度:システム利用料 10,000円(税込)

※1 評価者により異なります

申請の準備に当たっては、先に述べた評価項目のうち次の点に留意するとスムーズです。

1.管理規約の整備

総会の開催や議事録の作成など、管理規約や組合運営に関する基本事項がしっかり整っているかを確認しましょう。基本的な運営体制が評価において重視されます。

2.修繕計画の策定と実施履歴の整備

長期修繕計画がない場合や、修繕履歴が未整理の場合、評価が低くなる可能性があります。修繕履歴は客観的に管理の状態を示すものとして重要視されるため、きちんと整備し保管しておきましょう。

3.財務基盤の安定化

管理費・修繕積立金の収支や滞納管理費等への対応がしっかりと行われていることが求められます。修繕積立金が不足している場合は早めの対応が必要です。

4.耐震診断と改修計画

耐震診断の実施状況も評価対象です。診断未実施の場合、耐震性を確認する診断を実施しておくと、評価において有利になります。

より高いランクを目指すことで区分所有者が一丸となれば、マンションコミュニティー形成の一助にもなりそうですね。

まとめ

管理が行き届いたマンションは住み心地が良いだけでなく市場価値・流通価値が高まり、区分所有者が将来マンションを売却する時により高く売れること・早く売れることが期待できます。そのためには日常の維持管理や大規模修繕工事を適切に行う必要があります。マンション管理適正評価制度はそのための〝みちしるべ〟。この制度をツールとして適切な維持管理に取り組み、管理組合の活動を活性化させることで、快適なマンションライフを送りましょう。

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