【2025年5月最新】マンション大規模修繕工事やリフォーム工事に使える補助金とは

マンションは個人が所有する資産であると同時に都市の重要なインフラの一部でもあります。特に都市部では人口の半数以上がマンションに住んでおり、建物の老朽化と居住者の高齢化がともに進む〝二つの老い〟は、居住者と地域の安心や安全に大きな影響を与えかねません。このため国や自治体はマンション建物の予防保全を重視し、一定の条件を満たした工事や取り組みに対し、費用の一部を補助しています。今回の修繕成功Magazineでは、補助金による支援制度の概要やその背景にある行政の目的を解説するとともに、活用できる補助制度や申請のポイントなどについて紹介します。制度を理解し、費用見通しや計画内容の充実に生かしましょう。

目次

マンション大規模修繕工事やリフォーム工事に使える補助金とは

②築40年以上のマンションストック数の推移.webp
出典:国土交通省「マンションに関する基礎データ

まずは、どのような補助金が存在し、どのように利用できるか全体像を把握します。 大規模修繕工事では外壁補修や屋上防水、耐震改修、アスベスト除去など共用部分の多岐にわたる工事が実施されます。これらを資金面から支援するために国や自治体が用意している補助金は、それぞれ支援内容や対象となる工事項目、適用条件が異なります。例えば、劣化診断や耐震診断の費用を一部負担する制度があったり、断熱・省エネルギー化を図るリフォーム工事に助成が行われたりと、工事の目的によって活用できる補助金は変わります。

なぜ公共のお金でマンション修繕を支援するのか?

マンションは個人の所有物ですが、都市の住宅供給や防災面において公共性の高い存在でもあります。国土交通省が2024年8月に公表した調査結果によると、国内のマンションストック数は2023年末時点で約704.3万戸 あり、このうち約136.9万戸が築40年以上経過しています。10年後の2033年には274.3万戸、20年後には約463.8万戸と急増していくことが見込まれ、今後、適切な維持・修繕が行われなければ次のようなリスクが現実化するおそれがあります。
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マンションの経年劣化を放置すると周辺住民にも危険を及ぼします。 もしも大規模な地震が発生し建物が倒壊した場合、救助や居住者の生活再建支援には多くの時間と費用が必要になります。一方で健全なマンションは、居住者が避難所に逃げ出すことなく〝在宅避難〟する拠点となりえます。マンションを良い状態に保つために補助金を支出することは都市全体の安心と安定性を向上させ、将来コストの削減につながると考えられます。

支援の対象は?

大規模修繕工事や改修工事のうち、基本的に補助金の対象となる工事をまとめます。

補助金の対象となる工事
● 耐震補強工事(耐震診断・補強設計も含む)
● 断熱・省エネ改修(外断熱改修、サッシ改修、玄関扉改修、LED照明設置など)
● バリアフリー化(スロープ・手すり設置など)
● 防災機能向上(受水槽・非常用電源設備の更新など)

補助の対象となるのは、建物全体の機能を維持・向上させる共用部分の工事です。具体例としては上記の耐震補強や省エネ化、バリアフリー対策、防災対策、アスベスト除去などが挙げられます。区分所有者個人の専有部分は対象外となることが多いのですが、この記事の後半でご紹介する「令和7年度長期住宅優良住宅化リフォーム推進事業」では、子育て支援として住戸のキッチンの対面形式への移設や浴室大型化などが含まれています。

また、防犯対策の強化や電気自動車などの充電設備の設置工事といった改良工事を対象とする自治体の単独事業もあります。 マンション管理組合で長期修繕計画の策定または見直しを行う際は、利用できる制度があるか調べてみましょう。上手に活用すれば、居住者の費用負担を軽減しながらより良い住まいづくりが可能になります。

補助額は?

補助事業は「自助・共助・公助」の「公助」に位置づけられており、自己負担との併用が前提です。補助額は国や自治体により費用の一部(1/3〜1/2など)と定められ上限もあります。また、補助金の種類によっては、国と自治体の補助を併用できるものもあります。

申請のポイントは?

申請にはいくつかのポイントがあります。

① まずはマンション管理組合が正常に機能していることが必須です。マンションの登録や工事申請の事前相談を必須とする自治体が多く、修繕工事が総会で決議されていない場合や申請前に着工した場合は補助対象にならないことがあります。

② 自治体単独の補助を利用する場合は、工事を地元の中小企業者に優先発注することが要件となるケースが多いです。

③ 事業によっては、一度利用したことのある場合は一定期間の間、再申請できないものがあります。念のため過去の修繕履歴を確認することをお勧めします。

④ 工事の着手前1年以内にインスペクションを実施することや工事完了後にリフォーム履歴と維持保全計画を作成すること、「マンション管理計画認定」の取得などが必要です。

⑤ 補助金事業は年度ごとに実施が決定され、その年度により少しずつ補助額や適用条件が異なる場合があります。事業の主体となる官公庁や自治体のホームページで最新の情報を確認しましょう。

申請手続きは?

補助交付申請等の手続きは施工会社が行い、発注者(管理組合)は自ら申請できません。国の「住宅省エネ2025キャンペーン」では、あらかじめ住宅省エネ支援事業者(グリーン住宅支援事業者・窓リノベ事業者・給湯省エネ事業者・賃貸集合給湯省エネ事業者)として登録した施工会社が申請や発注者への補助金還元の手続きを行います。工事に使用する建材や設備も補助対象製品に登録されたものに限定されます。契約を締結する施工会社が住宅省エネ支援事業者に該当しているか、事前に確認しましょう。
補助金利用を相談できる事業者(住宅省エネ支援事業者)の検索

なお、補助金は基本的に工事完了後に受け取ることができ、受け取りまでの期間は事業によって異なります。各事業主体や自治体のホームページなどで確認しながら資金計画を立てましょう。

補助事業の例 ~国・自治体~

国や自治体の主な補助事業と支援内容を紹介します。(2025年5月現在)

国の補助事業

● 令和7年度長期住宅優良住宅化リフォーム推進事業

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出典:国土交通省 令和7年度長期優良住宅化リフォーム推進事業

対  象:リフォームを行う住宅(既存の戸建て住宅、共同住宅いずれも対象)

補助対象

1)リフォーム工事に係る補助額
a.特定性能向上リフォーム工事
b.その他性能向上リフォーム工事
c.三世代同居対応改修工事
d.子育て世帯向け改修工事
e.防災性の向上、レジリエンス性の向上改修工事

2)インスペクション等に係る補助額
① リフォーム工事に先立って行う既存住宅のインスペクションに要する費用
② リフォーム工事の履歴情報の作成に要する費用
③ 維持保全計画の作成に要する費用 ④ リフォーム瑕疵保険の保険料

補助上限

評価基準型:1住戸につき80万円 
認定長期優良住宅型:1住戸につき160万円
事業概要 | 令和7年度長期優良住宅化リフォーム推進事業【公式】

各補助事業における補助対象と補助上限

● 子育てグリーン住宅支援事業

対  象:必須工事は ① 開口部の断熱改修 ② 躯体の断熱改修 ③ エコ住宅設備の設置―の三つ。
これらと同時に実施することで、④ 子育て対応改修 ⑤ 防災性向上改修 ⑥ バリアフリー改修 ⑦ 空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置 ⑧ リフォーム瑕疵保険等への加入―も補助の対象となる

補助上限:1戸あたり5万~60万円 
事業概要|子育てグリーン住宅支援事業【公式】


● 先進的窓リノベ2025事業

対  象 :断熱改修を目的に窓やガラスを交換(断熱改修)するリフォーム工事。窓の交換と同一契約内で同時に行うドアの交換(断熱改修)も補助対象になる

補助上限 :1戸あたり5万~200万円
事業概要|先進的窓リノベ2025事業【公式】


● 給湯省エネ2025事業(高効率給湯器の導入支援)

● 賃貸集合給湯省エネ2025事業(賃貸集合住宅に対する小型の省エネ型給湯器の導入支援)

対  象 :エコキュートなど高効率給湯器の設置を補助。リース契約も対象

補助上限 :1戸あたり5万~20万円
事業概要|給湯省エネ2025事業【公式】
事業概要|賃貸集合給湯省エネ2025事業【公式】


● 既存住宅の断熱リフォーム支援事業 公益財団法人北海道環境財団(環境省)

対  象 :1.トータル断熱―断熱材、窓、ガラスを組み合わせて断熱改修工事  2.居間だけ断熱―窓を用い、居間をメインに断熱改修工事
補助交付申請は2025年6月13日(金)17時まで(メール必着)。 二つの支援事業は同時利用不可

補助上限 :経費の3分の1以内(5万~15万円)
事業概要 | 既存住宅の断熱リフォーム支援事業【公式】


自治体の補助事業

東京都

● 災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業

対  象 :窓・壁等の断熱化工事と省エネ設備の設置、リフォーム瑕疵保険の利用

補助上限 :工事に応じて費用の3分の1~2分の1、上限あり。管理組合による50戸以上の窓ドア改修の場合は助成単価・上限額を1.2倍に割増
断熱性能向上への支援を大幅拡充|5月|都庁総合ホームページ


● 東京都既存マンション省エネ・再エネ促進事業

対  象 :省エネ再エネに係る検討(検討計画書の作成)を専門家に委託する業務

補助上限 :経費を全額補てん(上限37万円)
クール・ネット東京 :東京都地球温暖化防止活動推進センター | 「東京都既存マンション省エネ・再エネ促進事業」

⑤東京都既存マンション省エネ再エネ促進事業.webp
出典:東京都既存マンション省エネ・再エネ促進事業

東京23区・市・町

自治体ごとの独自制度としてバリアフリー化や創エネルギー・省エネルギー機器等設置、雨水貯留設備の設置、節水トイレや高断熱浴槽への改修、遮熱性塗装工事などへの支援メニューがある


横浜市

④横浜市 支援制度のご案内.webp
出典:横浜市ホームページ

● マンション・バリアフリー化等支援事業

対  象 :分譲マンションの共用部分又はその敷地のバリアフリー化整備工事。段差解消や手すりの設置等

補助上限 :費用の3分の1(上限は30万円または住戸1戸当たり8,000円のうち低い額)
マンションの共用部等のバリアフリー化補助 横浜市


● 集合住宅向け電気自動車等用充電設備設置費補助金

2025年度事業の準備中。(6月上旬詳細を公表予定)
2024年度は国及び県の補助を除いた額の2分の1、1基5万~10万円を上限に補助。
参考:横浜市集合住宅向け電気自動車等用充電設備設置費補助金のご案内(受付終了) 横浜市


● 集合住宅再生可能エネルギー電気導入促進事業

対  象 :高圧一括受電化に必要となる受変電設備及び電力量計の設置工事

補助上限 :受電する1棟当たり850万円または1住戸当たり8万5,000円の低い額
横浜市集合住宅再生可能エネルギー電気導入促進事業補助金のご案内 横浜市


川崎市

● 川崎市マンション段差解消工事等費用助成制度

対  象 :敷地内通路、外部出入口、廊下、階段に傾斜路、手すり等の段差解消工事

補助上限 :費用の3分の1(上限は住戸数×1万円)
川崎市 : 川崎市マンション段差解消工事等費用助成制度


● 川崎市マンション耐震改修等事業助成制度

対  象 :1986年5月31日以前に建築確認を受けて着工したマンションの耐震診断、耐震設計、耐震改修工事

補助上限 :費用の3分の2 (上限1戸4万(診断)~5万円(設計))耐震改修工事は費用の15.2%、上限は1住戸当たり30万円
川崎市 : 川崎市マンション耐震改修等事業助成制度


● 川崎市EV用充電インフラ補助金(共同住宅向け)

対  象 :電気自動車等の充電設備を設置する工事。経済産業省補助金の申請を行った管理組合が対象

補助上限 :国の補助金等を除いた額の4分の3
上限はコンセント1基12万(20基まで)~普通充電器とコンセントスタンド23万円(普通充電器10基まで、コンセントスタンド20基まで)
川崎市 : 川崎市EV用充電インフラ補助金(共同住宅向け)


横須賀市

● 令和7年度高齢者住宅リフォーム補助金

対  象:65歳以上の方が自ら住まう住宅(マンション専有部分を含む)の20万円以上のリフォーム工事(抽選250件)
申請受付は2025年5月30日(金)まで。横須賀市の他の補助制度等や国の「住宅省エネ2025キャンペーン」との併用不可

補助上限:一律10万円 
高齢者住宅リフォーム補助金について|横須賀市


● マンション耐震診断補助

対  象:1986年5月31日以前に建築確認を受けて着工したマンションの耐震予備診断と耐震診断。予備診断を実施し倒壊の危険があると判断された場合のみ耐震診断に進むことができる

補助上限:予備診断1棟につき費用3分の2(上限12万円)、耐震診断は半額(上限1住戸あたり3万円)
住宅の耐震診断補強工事補助事業|横須賀市

支援制度の探し方

出典:一般社団住宅リフォーム推進協議会

具体的にどのように制度を探し、申請に必要な手続きを進めるかポイントを押さえます。 まず、国や地元自治体のホームページをこまめにチェックし、自分のマンションで利用可能な支援制度を探しましょう。住宅改修の担当窓口に直接問い合わせてみるのも良い方法です。

次に、施工会社やサッシ、ドアなど各部品を扱うメーカー、管理会社は最新情報をキャッチしているので相談してみましょう。お住まいのマンションを熟知している専門家ならではの多角的な改善策を提案してもらえるかもしれません。申請に必要な書類など細かな要件も把握しているので、スムーズな手続きが期待できます。

補助事業の中には申請の受付開始から締め切りまでの期間が短いものや、予定数に達したら締切日の前に受付を終了するものがあります。マンション居住者への説明や総会決議などの事前準備は必須です。

住宅リフォーム推進協議会の「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」では、全国の自治体の支援制度を探すことができます。工事費用の補助のほか、改修工事の検討段階における専門家の派遣などもあります。

補助金申請が通らなかった場合は?

補助金の支給を期待していたのに不採択・・・そんな時はどうすればよいのでしょうか。 施工会社に対応策を聞きました。

① 工事内容の見直し

不採択となった理由を発注者(管理組合)と施工会社で共有し、必要に応じて工事内容の精査や見直しを行います。特に、サッシ改修のように新たな部品を取り付ける工事の場合、すでに部品の調達や加工作業などが進行しているため、途中で工事を取り止めることは困難です。リスクを最小限に抑え、円滑に工事を進めるためにも、補助金の交付決定を受けてから契約を進める、あるいは自己資金の範囲内で工事を行うなど計画的な準備が必要といえます。

② 『共同事業実施規約』の取り交わし

補助事業の利用にあたり、発注者(管理組合)と施工会社の間であらかじめ『共同事業実施規約』を取り交わします。これは、万が一補助金申請が通らなかった場合や補助金額が予定より減少した際の対応について、双方が誠意をもって対応する旨を記載したものです。 補助事業の不採択などの場合は、この取り決めをもとに冷静かつ建設的に話し合いを進めます。

補助金申請は決して簡単な手続きではありません。施工会社や管理会社との信頼関係を築き、不採択の場合はその理由を分析しながら柔軟な対応を検討しましょう。

まとめ

マンションを快適な状態に保つことは、所有者の資産価値を向上するだけでなく、住みよいまちづくりや都市の安全にもつながるという視点を持つことが大切です。補助金の手続きに不安がある管理組合は施工会社や補助金事業の窓口、サッシなど各工事に関わる部品を扱うメーカー、管理会社などへ相談することをお勧めします。早めに情報を収集して補助金を最大限に活用し、計画的かつ合意形成をしっかり行いながら、将来的にも安心して住めるマンション運営を目指しましょう。

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