インスペクションとは?中古住宅をリフォーム・売却する前に知っておきたいメリット

現在、中古住宅の売買やリフォーム市場において『インスペクション(建物状況調査)』の活用が注目されています。インスペクションとは具体的にどのようなことを行うのでしょうか。今回は費用相場や活用するメリットなどをはじめ、中古住宅の売買やリフォーム時に活用できる『インスペクション』についてわかりやすくご紹介します。中古住宅の売却を検討している方、リフォームを検討している方は、インスペクションを有効活用してお住まいの未来を考えてみてはいかがでしょうか。

目次

インスペクションとは

インスペクション(inspection)は直訳すると「検査」や「点検」を意味し、建物状況を把握するための調査のことをいいます。『建物状況調査』や『住宅診断』とも呼ばれています。
建築士などの専門家が建物状況の調査を行い、修繕の必要性やその時期、必要な費用などのアドバイスを行います。

新築住宅においても、建築基準法に基づく検査とは別に欠陥や施工ミスがないかを確認するために専門家によるインスペクションが活用されていますが、近年、中古住宅の売買においても戸建て・マンション問わずインスペクションの活用が注目されています。インスペクションを実施することで中古住宅の劣化状況を正しく把握することができるため、リフォーム前に実施することも効果的です。

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■インスペクションが注目されている背景

日本ではこれまであまり馴染みがなかったインスペクションですが、もともと中古住宅をリフォーム・リノベーションしながら長く住み続けるという考えが主流の欧米では広く一般的に活用されています。実際に欧米諸国と日本の中古住宅流通シェアを比べると、欧米諸国は約7090%、日本は14.5と低い水準となっています。国土交通省「住宅着工統計」(平成30年)より
その背景には、これまで中古住宅は新築住宅と比べても建物の劣化状況や今後必要な修繕などを把握しづらく、資産価値や販売価格の見極めが難しいという課題がありました。

そこで、2018年施行の「宅地建物取引業法の一部を改正する法律(改正宅建業法)」に下記の義務付けが行われました。

  1. 媒介契約締結時のインスペクション業者あっせんの可否を明示して売主の意向に応じてあっせん
  2. 重要事項説明時に宅建業者がインスペクション結果を買主に対して説明
  3. 売買契約締結時に基礎、外壁等の現況を売主・買主が相互に確認し、その内容を宅建業者から売主・買主に書面で交付

参考:改正宅地建物取引業法の施行に向けて参考資料(国土交通省)

このように中古住宅の売買やリフォーム市場を活性化させるための法改正が進められ、取り組みの1つとしてインスペクションの活用が注目されています。たとえ同じ築年数が経過したマンションでも立地条件や周辺環境、使用状況によって劣化状況は異なりますし、築年数の経過した建物でも適切なメンテナンスを行えば建物の寿命を延ばし資産価値の維持や向上をさせることができます。そういった築年数だけでは判断できない建物の劣化状況を把握し、中古住宅の資産価値を正しく評価するために活用できるのが『インスペクション』です。

インスペクションが広がることで、これまでは新築住宅だけ検討していたという人も中古住宅も候補の1つに加わり、中古住宅市場は今後さらに拡大していくことでしょう。

 

インスペクションは具体的に何をするの?

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インスペクションでは建築士などの専門家によって、屋根や柱、内外壁、天井、床などを目視で調査し、ひび割れや雨漏りなどの劣化や不具合がないかをチェックします。他にも、排水管や給水管、給湯管、換気扇などの設備も目視にて調査を行います。
戸建て住宅の場合は基本的には目視で確認できる範囲は全て調査を行いますが、マンションの場合は主に対象の専有部分のみの目視調査です。一部共用部分についても調査が必要な場合は事前に管理組合の承認が必要になりますので注意しましょう。

 

インスペクションの所要時間はどのくらい?

インスペクションにかかる時間は住宅の広さや形状、調査範囲によっても異なりますが、基本的な調査の場合、平均では30坪で約23時間程度が目安です。しかし、調査箇所が少ない場合や調査スタッフが複数人いるという場合には当然所要時間は短くなりますし、逆に床下や屋根裏など立ち入る場所が多い場合や家具がある状態で行う場合などはそれだけ余計に時間が必要になります。

 

中古住宅を売却する前にインスペクションを行うメリット

中古住宅を売却する前にインスペクションを行う場合はどのようなメリットがあるのでしょうか。

 

1.競合物件との差別化を図れる

中古住宅を売却する際にインスペクション済み物件として売り出すことで購入希望者に安心感を与え、競合物件との差別化を図ることができます。また、買主が見つかりやすくなるだけでなく、売却前にインスペクションを実施することで建物状況を正しく把握できるため、適切にメンテナンスを行っていた場合は築年数の相場よりも高く売却できる可能性もあります。

このようにインスペクションは中古住宅の売却・購入を検討している双方にとってもメリットがあります。専門的・客観的な基準で中古住宅の価値を示すことで売主は自信を持って売却することができ、買主も安心して購入することができるのです。

 

2.売買取引後のトラブルを防ぐことができる

売却前にインスペクションを実施することで、売主と買主の両者が正しく建物状況を把握した上で売買取引ができるため、取引後のクレーム等のトラブル回避に繋がります。インスペクションによって建物の劣化状況を正しく把握すれば修繕が必要な箇所が分かるだけでなく、売主は修繕やリフォームなど劣化状況に応じて適切な対応ができます。

修繕やリフォームを行わずに売却をするという場合でも買主にインスペクションを実施した事実を伝えることで買主は今後修繕に必要な費用を見通すことができ、販売価格が妥当かどうか判断しやすくなります。

 

3.既存住宅売買瑕疵保険の要件をクリアできる

『既存住宅売買瑕疵(かし)保険』とは、中古住宅を売買する際に売主が買主に対して負う「瑕疵担保責任」をカバーするための保険であり、加入するためにはインスペクションに合格することが必須となっています。

ここで「瑕疵担保責任」とは、購入した後に不具合や欠陥があった場合に売主が負う責任のことをいいます。新築住宅では売主は契約不適合責任(旧称:瑕疵担保責任)保険に加入する義務があり、瑕疵担保責任期間は新築から10年間と定められていますが、中古住宅を売却する場合は瑕疵保険への加入が義務付けられていません。中古住宅の売主が不動産会社の場合は引き渡しから最低2年間、売主が個人の場合は3ヵ月以内とする特約をつけるケースがほとんどです。

『既存住宅売買瑕疵保険』に入ることで最長で5年間の保険を受けることができ、売主・買主の双方にとって安心感につながるでしょう。

 

リフォームをする前にインスペクションを行うメリット

次に、リフォーム前にインスペクションを行う場合はどのようなメリットがあるのでしょうか。

 

1.物件の状態を把握することでリフォーム計画の指針となる

インスペクションを活用することで、修繕が必要な箇所や費用などが分かるためリフォーム計画を立てやすくなります。インスペクションのメリットは、調査を行うことによって物件の状態を客観的に正しく把握でき、専門家のアドバイスを受けられることです。築年数の古い住宅であれば「あと何年くらい使えそうか」といったリフォーム計画が立てやすくなり、今後必要となる修繕資金を積み立てておくためにもインスペクションは有効です。

 

2.補助金を受けるための要件をクリアできる

住宅をリフォームする際に活用できる補助金の1つに『長期優良住宅化リフォーム推進事業』があります。『長期優良住宅化リフォーム推進事業』とは、住宅の長寿命化や省エネ、子育てしやすい環境整備などを目的としたリフォーム工事に対する支援事業です。国が定める一定の要件をクリアすることで、リフォーム費用の一部が補助されます。補助金を受けるための要件をクリアするためには、リフォーム工事の着工前1年以内に建築士によるインスペクションを実施する必要があります。リフォーム費用をはじめインスペクションにかかった費用なども補助金の対象となり、補助対象となる工事費等の1/3の額(戸当たり補助限度額:原則100万円)が補助されます。補助金を活用することでリフォームにかかるトータルの費用を軽減することができるため、リフォームを検討している場合はインスペクションの実施を検討してみてはいかがでしょうか。

 

リフォーム時に活用できる他の補助金についてはこちらの記事で詳しくお話しています。

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インスペクションの費用相場

インスペクション費用の相場はいくら?

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インスペクションを依頼する物件の規模や地域、会社などによって料金は異なりますが、基本料金は45万円、そこにオプション料金などを加算すると15万円以上必要な場合もあります。さらに修繕の必要性が判明した場合は、追加で修繕費用が必要です。

初期費用はかさみますが、インスペクションは将来への投資とも捉えることができます。中古住宅を売却・リフォームする前にインスペクションを実施することで劣化や不具合に気付くことができ、その結果に基づいて適切に修繕を行えば売却時の販売価格を上げることができるかもしれません。また、買主にとってインスペクション済みの物件は購入の安心材料ともなるため買主を早く見つけて売ることができる可能性が高まります。

 

インスペクションの費用は誰が負担するの?

中古住宅を売買する場合、インスペクションの費用は売主または買主のどちらかが負担します。
売主は物件を売却しやすくするため売却前にインスペクションを依頼しますが、この場合は売主が費用を負担します。一方、購入する際の判断材料として物件を専門家に確認してもらうという目的で買主がインスペクションを依頼するケースは買主が費用を負担します。中古住宅の売主が不動産会社の場合は不動産会社が費用を負担してくれるケースもあります。

 

インスペクションを活用して住まいの未来を考えよう

今回は中古住宅におけるインスペクションの活用について解説しました。住宅のプロによって住宅の状態を客観的にチェックしてもらえるインスペクションは、大切なお住まいの資産価値を把握するきっかけになります。

住宅の売買やリフォームは大きな買い物だからこそ、後悔のないようにじっくり検討していきたいもの。インスペクションの実施は任意ではありますが、中古住宅を売却する際やリフォームの際に受けられるメリットがたくさんあります。これまで適切に修繕・メンテナンスしてこられた方も、そうでない方も、お住まいの資産価値を正しく評価してもらえるインスペクションをこの機会に活用してみてはいかがでしょうか。

 

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