マンション大規模修繕工事はどのくらいの周期?適切な時期の目安とは

マンションの老朽化を防ぎ、資産価値を守るためには適切なタイミングで大規模修繕工事を実施することが重要とされています。それでは、大規模修繕工事はいつ実施するのが適切なのでしょうか。
今回は大規模修繕工事の一般的な修繕周期の目安や法律の定め、2回目の大規模修繕工事の注意点などを詳しく解説します。

目次

マンション大規模修繕工事の周期の目安

マンションの大規模修繕工事は長期修繕計画に基づいて行われますが、国土交通省が定める『長期修繕計画ガイドライン』によると、大規模修繕工事は12〜15年周期が実施の目安とされています。

長期修繕計画とは、マンションの老朽化を防ぐために管理組合が作成する長期的な修繕計画のことです。長期修繕計画には、外壁塗装工事や鉄部塗装工事、タイル補修工事、シーリング工事、防水工事、給排水設備工事といったように、共用部分のそれぞれの箇所について修繕時期や修繕内容、工事費用などの計画が30年間分まとめられています。

『長期修繕計画』について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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しかし、長期修繕計画はあくまでも計画に過ぎません。マンションによって建物の状態や劣化進行度合いは異なるため、大規模修繕工事を行う周期もマンションによって異なります。この12〜15年という修繕周期はあくまでも目安であり、マンションの劣化状況に合わせた適切な修繕周期で大規模修繕工事を行うことが重要です。

長期修繕計画に必要な建物調査診断と法で定められた全面打診調査

大規模修繕工事は長期修繕計画に基づいて行われるとお伝えしましたが、長期修繕計画通りのタイミングで工事が必要か最終的に判断するためには『建物調査診断』が有効です。建物調査診断は建物の劣化状況を把握するための調査であり、今すぐに修繕が必要なのか、今すぐではない場合はいつ大規模修繕工事を実施すれば良いのかなど、劣化状況と長期修繕計画を照らし合わせて適切な修繕のタイミングを判断することに役立ちます。大規模修繕工事の修繕時期は、長期修繕計画や建物調査診断の結果をもとに総合的に決定することが大切です。

『建物調査診断』について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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また、マンションを管理する上で忘れてはいけないのが建築基準法で定められている『定期報告制度』です。マンションの所有者である管理組合や建物オーナーは建物を適正に維持管理し、安全性を確保しなければなりません。そのため、定期報告制度に基づき専門の資格者による検査を行い、その結果を特定行政庁(都道府県等)に報告することが義務付けられています。
特に、外壁の劣化に対して修繕やメンテナンスを怠ると、タイルやモルタル等が剥落し歩行者にまで危害を加えてしまう恐れがあるため、外壁については特定建築物定期検査(手の届く範囲の打診等)により異常が認められた場合や、竣工・外壁改修後・外壁全面打診等調査実施後から10年を超える場合、落下により歩行者などに危害を加えるおそれのある部分の『全面打診調査』を実施することが義務付けられています。
※ただし例外として、調査実施後3年以内に外壁改修もしくは全面打診等が行われることが確実である場合や、剥落防止のためのネットを張るなど安全を確保するための対策が講じられている場合は全面打診調査を行わなくても良いとされています。

マンションの大規模修繕工事では足場を設置して外壁全面の打診調査を行いますので、修繕周期の目安である12〜15年ごとに大規模修繕工事を行うことで定期報告の要件を概ね満たすこともできます。定期報告のタイミングと合わせて大規模修繕工事を検討するのも良いでしょう。

『定期報告制度』について対象建物なども含め詳しくはオンラインセミナーvol.03で解説していますのでご覧ください。

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 2回目以降の大規模修繕工事の注意点

一般的に12〜15年のサイクルで行われることが多い大規模修繕工事ですが、1回目と2回目の工事では工事内容が異なるため注意が必要です。1回目の大規模修繕工事は新築時から12〜15年後に行われるため、経年による劣化はそこまで進んでいない場合が多く、部分的な補修や修繕で済むケースも多いでしょう。しかし、2回目の大規模修繕工事となると1回目の工事からさらに12〜15年が経過し、新築時から数えると24〜30年が経過することになります。そのため、1回目は必要なかった工事が必要になってきり、設備については劣化状況に合わせて補修や修繕ではなく交換の必要が出てくるケースもあります。

長期修繕計画ガイドラインでは、2回目の大規模修繕工事で必要な工事の一例を次のように示しています。

屋上防水の撤去・新設

屋上防水については、修繕周期によって修繕の方法が異なります。例えば、部分的な補修や既存防水層は残した状態での修繕などは12〜15年周期で必要となりますが、既存の防水層を撤去して新たな防水層を形成するといった修繕は24〜30年ごとに必要です。
つまり、屋上防水工事は1回目の大規模修繕工事では補修や修繕などが一般的であるのに対し、2回目の工事では撤去・新設というように一からの修繕が必要となり、費用も増額となる傾向があります。

屋上防水工事について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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金物の交換

金物とは集合ポストや宅配ボックス、ベランダのパーテーション(隣戸との仕切り板)などのことで、年数を重ねるにつれて錆や破損などの不具合が多く発生するようになります。特にベランダにある金物は足場があれば在宅扶養で各戸の工事が可能なため、2回目の大規模修繕工事のタイミングで検討することをおすすめします。

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消防用設備の交換

消防用設備はいざという時に使えないのでは意味がありません。消防法では定期的な点検が義務付けられていますが、経年劣化による不備がないよう交換時期に合わせて消防用設備を取り替えることが大切です。例えば、屋内消火栓設備(消火栓ポンプ・ホース類など)や連結送水管設備は23〜27年ごと、自動火災報知設備は18〜24年ごとというように交換する時期の目安が定められています。

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機械式駐車場の交換

機械式駐車場の場合は18〜22年を目安に装置の入れ替えの検討が必要です。
しかし、高齢化や若い世代の車離れ、収容可能サイズの制限により入庫できない車が増えていることなどを背景に、特に都心部では機械式駐車場の空きが増加しています。駐車場の空きが増えると、保守点検などの維持費用だけでなく修繕費用が不足する事態となり、管理組合を悩ませる課題となっています。
そのため、2回目の大規模修繕工事のタイミングで機械式駐車場を解体して平置き駐車場への変更を検討するケースも増えています。平置き駐車場の場合でも路面の陥没による修繕や白線消失などに対するメンテナンスは発生しますが、機械式駐車場と比べるとランニングコストを抑えることができます。

まとめ

今回は一般的な大規模修繕工事の周期についてお伝えしてきましたが、もちろん劣化箇所をその都度修繕していくという考え方もあります。しかし、長期修繕計画に基づいて修繕積立金を積み立て、マンションの劣化状況に合わせて適切なタイミングで大規模修繕工事を行う方が将来的なコストを抑えやすい傾向にあります。今回紹介した修繕周期はあくまで一般的な目安であり、資産価値を守るためにはマンションに合った最適なタイミングで大規模修繕工事を実施することが大切です。

株式会社ヨコソーでは、大規模修繕工事に関するご不明点をできる限り解消し、より多くの管理組合様や建物オーナー様にとって有益な情報を発信してまいります。大規模修繕工事や建物調査診断、専有部分のリフォーム、給排水設備工事など、お気軽にご相談ください。

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