マンションで漏水事故!その原因と対処法

部屋の中に水たまりが!さぁ困った、雨漏りか、漏水か―。
漏水は時間や場所を選びません。豪雨に見舞われた時だけでなく、晴れた日に突然天井から水が落ちてくることがあります。また、気づいたら天井にシミができていた、押入れの中がカビだらけになっていた、など壁の内側や床下といった目につかない場所で静かに進む漏水もあります。ご自宅が漏水被害にあった場合や、洗濯機のホースが外れるなどして大量の水をこぼしてしまった場合はすぐ管理会社等に連絡し、対応を相談してください。今回の修繕成功Magazineでは実際に漏水が発生した状況を紹介し、どのような対処法があるか考えます。漏水の危険信号を知り、漏水被害を最小限に食い止めましょう。

目次

マンションの漏水事故原因

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マンションの漏水は、さまざまな原因により突然起こります。台風や集中豪雨でサッシやドアの隙間から雨水が吹き込む雨漏りのほか、

■ 突然天井からポタポタ水が落ちてくる

■ 窓ぎわに水たまりができる

■ 壁や天井にシミが広がっている

■押入れの中がカビだらけになっている

■ベランダの水がはけずに水浸しになっている

■深夜にどこかで水の滴る音が聞こえる

などが漏水の危険信号です。

漏水に気づいていても時間が経過して水が乾いてしまうと「もう大丈夫」と思いがちですが、放置すると、漏水が進行し壁の裏側を伝って家具や畳、押入れの衣類などに被害が広がる恐れもあります。ご自宅だけでなく他の住戸や下のフロアに水が流れているかもしれません。漏水やその気配に気づいたら、まず管理会社に連絡し、一度調査をしてもらいましょう。結露が原因だったということもありますが、遠慮はご無用。見てもらい、何もなければ一安心です。

それでは、マンションで発生した漏水事故の状況をみていきましょう。

【ケース1】天井から水が落ちてきた
ゲリラ豪雨に見舞われたある夕方。東京都内のマンションに住むAさんが帰宅したら、ご自宅の廊下が濡れていました。廊下の天井から漏水です。急いでバケツで水を受け、管理会社に連絡をして、状況の確認を依頼しました。漏水はしばらく続き、バケツ一杯の水がたまった後、何事もなかったかのように止まりました。

管理会社の担当者や修繕工事会社が確認したところ、屋上に防水の不具合が見受けられました。その後、適切な調査と補修対応により漏水は改善。早期に対応できたため、漏水した天井内装も比較的簡単な貼替などで済みました。

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玄関のダウンライトの隙間から漏水

【ケース2】窓枠からの漏水
Bさん宅では廊下の窓の隅に、時々水たまりができていました。結露かと思いタオルでふき取っていたのですが、気がつくと水たまりができています。管理会社に連絡して調べてもらったところ、窓のシーリングが劣化して窓と外壁の間に隙間ができ、そこから雨水が吹き込んで水たまりを作っていたことが分かりました。他の住戸では同様の漏水は見られません。外壁やシーリングは共用部分です。マンション管理組合が修繕工事を発注し、以後、水たまりができることはなくなりました。

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窓ぎわに水たまり。最初は結露かと思ったが…

【ケース3】壁の内側の漏水
Cさんの住むマンションは築25年が経過しています。内装が古くなり壁紙にカビが発生していたため、リフォームすることにしました。リフォーム施工会社が壁をはがしてみると、壁の内側で漏水が発生しており、下地の石膏ボードや鉄部の一部で腐食が進んでいることが分かりました。これがカビの原因だったのです。他の部屋の壁は問題がなく、どこから漏水してきたのかは不明です。腐食した部分をすべて交換してリフォーム工事を完了しました。

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壁の内側で発生していた漏水

【ケース4】積雪による漏水
雪が数日降り続いた後のある日、Dさんは雪かきをした日以降にベランダ側サッシの下部から室内に水がにじみ出ているのに気づきました。管理会社に連絡して調べてもらったところ、どうやらベランダに積もった雪がサッシの下に入り込み、防水層の上端からサッシの隙間を通って室内にじみ出たようです。防水端部の隙間を充てん剤でふさぎ、漏水は解消しました。
Dさん宅のように、マンションのベランダで雪かきをした後に漏水が発生することがあります。ベランダの雪をサッシの側に寄せておくと、昼間いったん溶けはじめた雪が気温の下がる夜間に再び凍り、雪を寄せた場所で〝氷の壁〟として固まってしまいます。サッシと氷の壁の間に雪どけ水が溜まり、防水層の端から建物内に侵入するのです。
雪かきをする時は雪を建物の側に寄せないように注意しましょう。また、雪を排水口のそばに集める時は、雪で排水口をふさがないよう水の通り道をつくっておくようにしましょう。

マンションで漏水が起こった場合の対処法

漏水被害に遭ったら
生活に支障をきたすのは天井からの漏水です。まずは家具や衣類が濡れないよう移動し、バケツやポリ袋で漏水を受けるなどして水濡れ被害を最小限に抑えてください。窓やベランダからの漏水はバスタオルなどで水を押さえ拭き取ります。

そしてできるだけ早期に管理会社または管理組合に連絡して対応を依頼し、専門業者に漏水の原因を特定してもらいましょう。漏水が起きている間に状況を見てもらうことが望ましいのですが、夜間や災害発生時などすぐに来てもらうことができない場合は、状況を写真や動画に撮っておくと原因究明の参考資料となります。

漏水を発生させたら
お風呂の水をあふれさせた、洗濯機の排水ホースが外れたなどの原因で漏水を発生させてしまった場合は、直ちに管理会社または管理組合に連絡してください。水がどこに流れていったかは調べてみないと分かりませんが、漏水被害を受けた方の損害を賠償する責任があります。管理会社が各戸の聞き取り調査をしたり、漏水調査を行ったりして状況を把握してから対応することになります。
損害補償の際は、ご自身が加入している個人賠償責任保険や火災保険、自動車保険、クレジットカードの付帯保険などでカバーできることが多いので、保険会社に報告して加入状況を確認してください。これらの保険は自身が被害者になった場合も補償を受けられます。

給湯管の更新
今から約20年以上前に建設されたマンションには給湯管に銅管が使われていることが多く、築30年が近づくと漏水事故の原因の一つである孔食(ピンホール)が発生しやすくなります。1件でも漏水事故が発生したら注意信号。マンション全体で配管の更新または更生工法によるリニューアル工事の前倒しを検討する時期かもしれません。なぜなら漏水事故等の発生源が専有部分の給湯管だったとしても、配管類は共用部分と一体で更新する必要があり、区分所有者が単独で更新することは不可能だからです。

築年数の経ったマンションでは管理規約を改定した上でマンション全体の一斉更新に踏み切った例や、修繕積立金を取り崩して費用をねん出した例があります。マンションの長期修繕計画を踏まえ、理事会で対策の検討に着手しましょう。

参考文献:出典 国土交通省
管理組合によるマンション専有部分等の配管類の更新事例調査
給排水管更新工事 実施要領書

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(出典:国土交通省 給排水管更新工事実施要領書)マンションの給排水管更新工事のイメージ

給湯管の更新・更生についてはこちらのページもご覧ください。
よくあるご質問 「更新工事」と「更生(こうせい)工事」の違いは何ですか

賠償責任と費用負担
漏水の原因調査は、漏水箇所周りの天井裏を確認したり上階居住者の協力のもとで立ち入り調査や炭酸ガス検知器調査を行ったりするほか、屋上の散水調査などの方法で実施します。調査費用は管理組合が負担します。
その後、原因が共用部分にあると特定された場合は管理組合の費用負担で、専有部分の場合はその区分所有者の負担で修繕工事を行います。
第三者の水濡れ被害については漏水発生源に賠償責任がありますが、原因が不明で修繕工事に着手できない場合は管理組合が責任を負います。管理組合が加入する保険には「水濡れ原因調査費用補償」や「水害補償」「水漏れ補償」などさまざまな種類の特約があり、水漏れ被害による壁紙の張替えや家財買替えの費用を補償するものがあります。理事になったら加入保険の適用範囲についても一度確認しておきましょう。

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漏水調査耐圧試験

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水栓の取り換え工事

マンション漏水時の連絡先

ご自宅が漏水被害にあった場合は、どのような状況でも上階が発生源と決めつけて直接クレームを入れることは避け、直ちに管理会社に連絡して状況を確認してもらいましょう。先に紹介した事例の通り、漏水が真上の住戸で発生しているとは限りません。屋上や廊下側の漏水が床や天井を伝って落ちてくることもあるのです。
漏水の発生場所が共用部分の場合、原則、区分所有者全員(マンション管理組合)が責任を負います。原因が分からなくても 、区分所有法では「共有部分が原因でない」ことが分からない限り、管理組合に責任があるとみなします(※)。管理会社または管理組合よりご自宅の水回りや点検口からの調査を依頼されたら、居室内への立ち入りにご理解とご協力をお願いします。

※建物の区分所有等に関する法律第九条 「建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。」

もし、ご自宅で漏水を発生させてしまったら、被害を最小限にとどめることが最優先です。水道工事店などに修理を依頼するとともに管理会社またははマンション管理組合にも報告し、極力被害の拡大を抑えるようご協力ください。

マンション漏水には予防が大切

漏水はいつ、どこで発生するか分かりません。しかし、ご自宅が漏水の発生源にならないよう注意することはできます。日常のチェックポイントをご紹介しますので、気がついた時に確認するようにしましょう。

① キッチンやお風呂、洗濯機の水をあふれさせない
キッチンの下の排水パイプのつなぎ目から水がしみ出ていませんか。ハンドル部分に水漏れはありませんか。浴槽のお湯が自然に減っていませんか。洗濯機の防水パンは濡れていませんか。シンクの下に水漏れの跡がないか、浴槽や洗濯機の排水ホースはしっかりつながれているか、確認しておきましょう。

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洗面台の下の排水管。つなぎ目に水漏れはありませんか

②トイレの水漏れを見逃さない
洗浄水が止まらなくなっていませんか。温水洗浄便座のノズルから水が漏れていませんか。便座と便器の間に水漏れがないかなどを確認しましょう。トイレにものを落としたらそのままにしたり流したりせず、水道工事店などにレスキューを依頼しましょう。

③ バルコニーの排水口を詰まらせない
排水口の周りにものを置いたり、落ち葉や雪かきの雪でふさいだりしないよう注意しましょう。

④ 調理用油を流して詰まらせない
キッチンの排水口に〝白い塊〟はありませんか。これは調理油が蓄積してできる「オイルボール」。オイルボールが集まると管の詰まりや悪臭の原因となります。オイルボールを見つけたらトングまたはゴム手袋をはめた手で取り除き、燃えるごみとして処分してください。お湯などで流してしまうと排水管のさらに奥に流れていき、再び固まって管を詰まらせます。オイルボールをつくらないためには、油汚れはキッチンペーパーや新聞紙でぬぐい、天ぷら油は凝固剤で固めたり新聞紙に吸わせたりして燃えるごみとして処分するようにしましょう。マンションの排管全体の高圧洗浄も定期的におこなってください。

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オイルボール(画面中央 白色の塊)

まとめ

漏水の原因はさまざまで、いつ自分が被害者になるか加害者になるかは分かりません。
いずれの場合も漏水に気づいたらまず管理会社に報告し、対応を依頼してください。気づかぬうちに自宅が漏水の発生源になっていることもあります。管理会社から依頼があった場合は、室内への立ち入り調査にご協力ください。被害の拡大を防ぎ、快適なマンションライフを維持しましょう。

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株式会社ヨコソー リニューアル第三営業部部長 田中健太郎に話を聞きました。

ヨコソーでは屋上の防水や外壁の修繕を手掛けております。その中で漏水の改善も含めたご相談をお客様から頂戴することも多くございます。大半のマンションがコンクリート造となり、漏水の原因は多岐にわたりますが、その原因の一部は新築時の‘’作り方‘’によるところもあります。こうした建物の不具合やウィークポイントを発見し、大規模修繕工事の際に改善させていただいております。気になることがございましたらお気軽にご相談ください。

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