マンション漏水トラブル対策のための給排水管メンテナンス

大規模修繕工事では外壁や屋上防水、バルコニーなど防水性能や美観維持のための補修が中心となってきますが、築30年頃になると今までメンテナンスが中心だった給排水管の交換(更新)工事も検討する必要があります。普段見えない場所にあるこれらの設備ですが、生活を送る上でなくてはならない設備です。マンションに住んでいる方は給排水管の修繕時期や修繕方法について、どのくらいご存知でしょうか。

目次

マンションの建物不具合で最も多い漏水トラブル



マンションでの漏水トラブルは、築年数の浅いマンションに住んでいる方からするとあまり馴染みのないことからもしれません。居住者がお風呂を溢れさせてしまい家全体の床が水浸しになって下階へ漏水した、といったような居住者の過失による漏水を除き、漏水の多くは配管の劣化によるもののため、築年数の経過したマンションの方がより漏水トラブルは多くなると考えられます。しかし、築年数が浅いからとメンテナンスを怠っているといつの間にか劣化が進行し、漏水トラブルに見舞われる可能性は否定できません……。

国土交通省発表の「平成30年度マンション総合調査」のマンショントラブルの発生状況調査によると、過去1年間で発生したトラブルのうち「建物の不具合に関わるもの(31.1%)」が「居住者間の行為、マナーをめぐるもの(55.9%)」に次いで多いのだそう。そしてそのうち、最も多いのが「水漏れ(18.1%)」となっており、特にトラブルがなかったマンションを含めてもマンション全体の約6%程度は漏水によるトラブルが1年以内に発生したということになります。また、先日ご紹介した火災保険の値上げについても、原因の一つとして配管の凍結や老朽化による漏水が増加していることが挙げられました。このことからも、マンションの漏水トラブルは珍しいことではなく、増加傾向にあるということがいえるでしょう。

人為的な物ではなく建物の不備による水漏れの場合、給水管・排水管・給湯管といった配管の劣化や故障が考えられますが、お住まいのマンションではどのようなメンテナンスを実施されているでしょうか。普段見えない部分ですので忘れがちではありますが、配管は日常的なメンテナンスに加えて劣化状態診断や修繕、交換等が必要となります。長期修繕計画の見直しと同時に、配管の修繕や交換工事についても話し合っておきましょう。

 

配管のメンテナンスと修繕



配管には交換の前に、定期的なメンテナンスが欠かせません。消火設備や貯水槽などと違い法定点検ではありませんが、配管は毎日の使用によって劣化していくため管理組合や管理会社で清掃や点検の手配をしていることが多いのではないでしょうか。配管は交換が必要なほど劣化してしまうと多大な費用が発生します。必要なメンテナンスについて配管毎に見ていきましょう。
 

排水管のメンテナンス

排水管のメンテナンスでイメージするものとしては、マンションに住んでいる方は1年~数年に1度の排水管清掃があるかと思います。排水管はその名の通り台所や風呂場、洗濯機の排水を流す管のため、排水管の内部にたまった汚れを高圧水洗浄によって取り除き、トラブルを防ぐのが排水管清掃です。

しかし、排水管清掃時に居住者の在宅協力を得られず、未実施の住戸がでてしまっている管理組合様やオーナー様も少なくないのではないでしょうか。排水管清掃時は居住者の在宅のもと室内から洗浄工事を行う必要があるため、事前に日程を掲示した上で居住者に在宅してもらうこととなります。このとき在宅をしていなかった住戸の対応に関しては管理組合としても頭を悩ませるところ。

未実施の住戸についての対応については管理組合によるようですが、あらかじめ予備日を設けておき在宅しやすいよう配慮する他、未実施住戸については自費で実施するよう通知するといった対応をすることもあるようです。実際に使用していて詰まりなどを感じていない居住者にとっては煩わしく感じられるかもしれませんが、排水管清掃の必要性について理解を得られるよう管理組合様やオーナー様でも積極的な広報活動をおこなうことも必要です。

 
給水管のメンテナンス

住んでいるマンションが貯水槽方式の場合は、貯水槽の点検は定期的に行っているのではないでしょうか。給水管は排水管と違い、きれいな水が通るため詰まるような汚れが溜まらないということもあり、排水管よりは清掃や点検への関心が低いかもしれません。しかし、給水管が劣化してきた場合、漏水だけではなく普段使用している水の水質が劣化してしまうという問題があります。劣化が進んでくると水から異臭がしたり、サビの混ざった水が水道から出てくるといったトラブルとなりますが、費用も高額となる給水管の交換はすぐにできるものではありません。そこまで劣化してしまう前に2~3年に1度は給水管も点検しておくことが望ましいといえます。また、給水設備には給水管の他に水を送るための給水ポンプの点検も必要です。給水管自体は30年が交換の目安といわれていますが、給水ポンプは16年が交換の目安になります。給水管が無事でも給水ポンプが使えなければ水を使うことができませんので、給水ポンプの点検も忘れずに行うようにしましょう。

 

配管の寿命と修繕方法



給水管や点検等で配管の劣化が見られた場合、状態によっては交換ではなく修繕で対応することができることもあります。それが配管の“更生工事”と呼ばれる工事です。国土交通省の長期修繕計画ガイドラインの記載例によると、給排水管は30年を目安に交換を行うこととなっていますが、新築時もしくは交換後15年程度で更生工事を行うこととなっています。配管の更生工事や交換工事ではどのようなことを行うのでしょうか。
 

配管更生工事

配管の更生工事では配管すべてを新しくするのではなく、配管の内部を補修することできれいな状態を保つ工事が行われます。一般的には樹脂ライニング工法と呼ばれる更生工事を行うことが多く、これは配管を清掃した後、配管の内側を樹脂塗料でコーティングをするという修繕方法です。更生工事の大きなメリットとしては、交換と比べて費用が格段に安く、修繕費を抑えることができるという点があげられます。また、配管の交換と比べて簡単な工事で済むので作業時間が短く、在宅が必要な日数も交換と比較して少なく済むのも在宅が難しい共働き世帯の多いマンションでは大きなメリットです。世帯数や配管の構造によって在宅日数や工事日数は異なりますが、短ければ1~2日程度の在宅で済ませることができるのは居住者としてもありがたいですね。

しかし、更生工事はあくまでも現在の配管をコーティングするだけなので、配管の劣化具合によっては更生工事では対応できない場合もあります。また、更生工事を行った場合でも配管自体は交換しないため、いずれは配管の交換工事が必要となります。あくまでも配管の交換スパンを長くする工事と考えて、いずれ来る交換のための修繕積立金準備も忘れないようにしましょう。

 
配管交換工事

配管交換工事は配管自体が新しいものになるため、劣化しにくい素材の配管に変えることもでき、しっかりとメンテナンスをしていればしばらくは工事が必要なくなるというのが最大のメリットとなります。築年数の古い建物では腐食しやすい亜鉛メッキ鋼管などが使われている場合もあり、これを劣化しにくい硬質塩化ビニール管に交換することでも漏水や劣化のリスクを下げることができるのです。劣化が進んでいる配管や、劣化しやすい素材の配管は交換工事の方が長期的に見ると安心かもしれません。

しかし、交換工事は配管自体を交換するほかに、配管周りの設備の撤去・復旧が必要となるため更生工事と比較すると金額が大きく、更生工事の2倍以上の金額がかかることも珍しくありません。また、5日間程度の在宅が必要となることが多いため、居住者への負担も大きいといえます。交換工事を実施する際は在宅協力への理解を得られるよう工事説明会を実施した上で、不在住戸や空き家住戸への対応も考えておきましょう。

マンション全戸の専有部まで関わる配管の修繕や交換は、特に居住者の協力と理解が必要な工事となります。断水となるだけでなく、1日~数日間の在宅が必要となる配管の工事は管理組合様やオーナー様としても頭を悩ませるところですが、その一方で個人では対応しきれない場所でもあります。配管の工事が必要と判断された場合には、まず居住者の理解を得ることから始め、在宅の負担を少しでも減らせるよう日程調整方法や不在時の対応などを施工会社と協力して決めていきましょう。

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