マンショントラブル(音・駐車・ペット)への管理組合対処事例

2019年4月23日に国土交通省から発表された『平成30年度マンション総合調査結果』によると、過去1年間で発生したマンショントラブルのうち半数以上が「居住者間の行為、マナーをめぐるもの(55.9%)」だったのだそう。居住者同士のトラブルは管理会社で対応しきれない内容の場合や、直接管理組合に相談がある場合もあるため、すべてを管理会社任せにすることはできません。同調査でも実際にトラブルを処理した際の手段として「管理組合内で話し合った(58.9%)」が最も多くなっているため、管理会社がいるマンションでも管理組合が対処・解決しなければならないことは比較的多いと考えられます。今回は平成30年度マンション総合調査結果で多かった3つのトラブルについて、その対策方法をご紹介します。

目次

最も多い生活音問題の対処法



マンションで発生するトラブルの内、最も多いのが「生活音(38%)」に関するトラブルとのこと。同じ建物内に複数世帯が居住しているというマンションの構造上、何かしらの生活音が聞こえてしまうのは仕方のないことですが、生活音の許容範囲は人によって異なるのが生活音トラブルの難しいところです。また、生活音トラブルは必ずしも音量が大きいことがトラブルにつながるわけではなく、「煩音(はんおん)」と呼ばれる“聞こえる側の心理状態によって不快と感じる音”が原因となっているケースもあります。犬や猫が苦手な方にとっては音が小さくても鳴き声が聞こえるのは嫌かもしれませんし、子どもが苦手な方は赤ちゃんの泣き声も嫌かもしれません。こういった人によって感じ方が異なる音、というのも生活音トラブルになり得るのです。

生活音トラブルについてはトラブルとなっている居住者同士で話し合ってしまうと、「騒音がする」「静かにしている」の応酬となってしまう場合もあり、解決のために第3者が入って対応をすることが多いです。管理会社がいる場合には管理会社に相談するのも一つの方法です。管理会社がいない場合や、いる場合でも管理組合が対応をする場合には、中立的な立場で話し合いができるように測定器で音量を測定し、音が客観的に大きい場合(例えば、朝~夜50~60デシベル以上、夜中~早朝40~50デシベル以上)は騒音対策をしてもらう、それ以下の生活音の範囲であれば理解を求める、といった双方に納得感がある解決方法の提案を心掛けましょう。

 

違法駐車トラブルへの対処法



2番目に多いのは、マンションの居住者同士だけではなく外部の方とのトラブルになることも多い違法駐車に関するトラブルです。居住者が借りている駐車スペースに無断で第三者が車両を停めたり、マンション敷地内の駐車スペース以外の場所に駐車するといったトラブルがこれに該当します。隣の駐車スペースの車に誤って駐車されてしまった、といった経験は一度くらいあるかもしれませんが、中には敷地内の空き駐車場を日常的に勝手に利用したり、日中居住者が車を使っている時間帯を狙って意図的に駐車するといった悪質なケースもあるようです。

違法駐車のトラブルが問題となりやすいのは、マンションの敷地内で起こっている場合は私有地にあたるため、警察に対処してもらうことが難しいということがあります。公道であれば道路交通法違反として警察に動いてもらうことができますが、私有地に関しては基本的に警察が関与できないのです。そのため、これらの駐車トラブル対策は“無断駐車を防止する”ということが基本になります。

  1. 指定位置以外の駐車禁止の貼り紙やコーンを設置する
  2. 来客用の駐車場は事前予約制にする
  3. 監視カメラを設置する

といった駐車場の場所や状況に合わせた対策が考えられますが、この時に気を付ける必要があるのが、違法駐車している車両を見つけても車両に傷や汚れが付く可能性があることはしない、ということです。あまりにも悪質な場合にはタイヤにチェーンをかけたり、テープで警告文を貼ったりといったことがしたくなりますが、万が一車両に傷がついてしまうと無断駐車をした車両の持ち主に修理費用等を請求される可能性があります。警告文を置く場合にはワイパーに挟むなど車輛に傷をつけないように気を付けましょう。居住者による違法駐車だった場合には、違法駐車をしている人に管理会社から直接連絡してもらう、違法駐車禁止のチラシを配布するといったアプローチも可能です。

 

ペット飼育トラブル



ペットの飼育についてもトラブルの発生が多いとのこと。一昔前はペット飼育禁止のマンションが多かった印象ですが、最近のマンションではペット飼育が可能なところも増えてきました。ペット飼育についてのトラブルと一口に言ってもどのようなトラブルがあるのでしょうか。

ペット飼育の規約違反を巡ってのトラブル

ペットの飼育可否については多くの管理組合で定めているかと思いますが、飼育細則まで定めているでしょうか。管理規約で禁止されているにも関わらず飼育するのは居住者の問題ですが、ペット飼育可のマンションでも頭数や大きさなど細則を定めていないとトラブルの火種となってしまうことも。1頭でも大型犬を飼育していると音のトラブルを招きやすくなりますし、小柄な猫でも複数頭いればかなりの音がします。最低限、頭数や大きさ、共用部分に出す時はキャリーに入れる、といった細則を定めることで大きなトラブルを防止しましょう。

鳴き声・足音など騒音を巡ってのトラブル

一番多いトラブルが生活音に関するトラブルということからも分かる通り、音というのは居住者間トラブルを引き起こしやすい要素です。鳴き声については言わずもがなですが、足音については飼育したことがないとあまりイメージが湧かないかもしれません。しかし、小型犬や猫といった小さな動物でも3~6㎏程度ありますので、走り回るとかなり大きな足音がします。室内では鳴き叫ばないようにきちんと躾ける、室内では走り回らないように屋外で十分に運動させる、といった飼い主の管理で軽減ができるものもありますが、いずれも完全になくすことは難しいという面もあり、居住者間同士で平行線を辿ってしまう場合も。そういった場合には、飼育者には日々の管理に加えて防音マットや防音カーテンといった目に見える対策をしてもらうことで、近隣の方の理解を得やすくなりますので、飼育者には防音商品を使った対策も含めて対応してもらうと良いでしょう。

臭いや毛を巡ってのトラブル

音と同様に完全に防ぐことが難しいのが臭いや毛についてのトラブルです。特に毛については動物の毛が付着した洗濯物をベランダに干すことにより、風にのって近隣住戸の洗濯物に付着してしまうとアレルギーのある方にとっては深刻な問題となります。規約でペットのブラッシングをベランダでしない、といったことは定めることができますが洗濯物を干すことを禁止するのは難しいため落としどころが難しい問題です。

臭いについても同様でベランダに出さない、ペット用品をベランダで掃除しないといった規約を定めることはできますが、嫌いな方にとっては少しの臭いでも気になってしまうことも。目では見えないもののため第三者が口を出すのが難しいですが、これらの問題が発生した場合には、日頃のブラッシングやお部屋の清掃など、ペット飼育者の方に気を遣っていただくのが一番でしょう。

ペットの飼育トラブル全般に言えることとしては、規約を作った上で飼育者がマナーやモラルを守って暮らすのが大切であるということです。マンションによってはペットを飼育している区分所有者が共同でコミュニティを運営している場合もあり、マナー教室の開催やペット飼育者同士でコミュニケーションをとることで、規約の浸透やマナーの向上が期待できます。ペットの飼育トラブルの多いマンションではこのようなコミュニティ運営も良いかもしれません。

居住者間トラブルが発生してしまった後の対処だけではなく、管理組合としてトラブルを未然に防止することに取り組むことで居住者全員の満足度を高めるだけでなく、マンション自体の満足度や価値を向上することにつながります。時代やマンションの状況に合わせた規約の改正、コミュニティの形成など、トラブルのないマンション=みんなが気持ちよく過ごし続けられるマンションとなるよう取り組んでいきましょう。

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