分譲マンションの修繕・改修以外の長期的対策|建て替えを円滑に進める『マンション建替法』とは

分譲マンションの老朽化問題を解決し再生を図るためには、修繕・改修・大規模修繕工事のほかに『建て替え』という方法もあります。計画的に修繕工事を実施していても修繕の難しい場所が耐用年数を超えたり、躯体の構造上難しい改修が必要とされるようになる等、修繕や改修工事では対応ができなくなった場合に『建て替え』が検討されます。

そこで、分譲マンションの建て替えを実施しやすくするために『マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替法)』が施行されました。今回は、分譲マンションの建て替えを検討する上で知っておくべき『マンション建替法』について解説していきます。

目次

 『マンション建替法』とは

『マンション建替法』の正式名称は『マンションの建替えの円滑化に関する法律』です。この法律は『マンションの建替えの円滑化に関する法律』として2002年6月に成立し、同年12月に『建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)』の改正と同時に一部が改正されたことによりマンションの建て替えを円滑に進めることが可能になりました。

マンション建替法が制定された背景には、区分所有権や抵当権等の権利関係の移行や建て替え事業を推進する団体が不明確であったことに加え、容積率の制限により建て替えに多額な一時金が必要なケースが増えたために建て替え合意に至らない等、様々な問題がありました。

特に、この容積率の制限は建て替え事業に大きな影響があります。建て替えによって住戸数を建て替え前より増やすことができれば、余剰住戸を一般販売して建築費に充てることもできますが、近年建設されたマンションや狭小敷地のマンションでは容積率に余裕がなく、建て替え費用の住民負担を軽減する対策がとりづらいため、建て替え合意に至ることが難しくなっているのです。

 

これらの問題をクリアするために、『マンション建替法』が制定されました。このようなマンション建て替えを巡る背景がある現在では、建て替えを検討している分譲マンションの多くは、この『マンション建替法』に基づきマンション建替事業を推進し、区分所有者の建て替え合意に至る必要があるのです。

マンション建替法に基づくマンション建て替えの実施状況

『マンション建替法』が施行されてから15年余りで、どのくらいのマンションが建て替えを実現できたのでしょうか。

国土交通省の調査によると、2020年4月1日時点でのマンション建替法に基づいた建て替え件数は89件、マンション建替法によらない建て替え件数は165件となっており、マンション建替法を適用しない建て替え件数のほうが多いですが、マンション建替法を適用した件数は近年増加のペースを速めています。これから建て替えの時期を迎える建物では容積率に余裕がないケースが増えるため、この増加傾向は一層強まることが予想されるでしょう。



出典:国土交通省「マンション建て替えの実施状況」(令和2年4月1日現在)
https://www.mlit.go.jp/common/001351559.pdf

 

耐震性が不足しているマンションについて

マンション敷地売却制度

2014年にはマンション建替法の一部が改正されると同時に『マンションの建替え等の円滑化に関する法律』に名称が変更され、新たに「マンション敷地売却制度」が創設されました。今後発生が想定される南海トラフ沖巨大地震や首都直下型地震に備えて、耐震性が不足している分譲マンションについてはこの制度を活用することで、マンションを一括して売却することができます。今までは建て替えしか明記されていなかった『マンション建替法』に、老朽化対策の一つとしてマンションの敷地売却が追加され選択肢が広がりました。
 

容積率の緩和特例

マンション敷地売却制度と合わせて、2014年のマンション建替法の改正では、耐震性不足の認定を受けたマンションの建て替えを行う際に、特定行政庁の許可により容積率制限が緩和されるという特例が認められるようになりました。


このように老朽化マンション再生に向けた環境が整いつつある今、特に耐震性が不足している老朽化マンションについてはより早急な対策が求められているのです。

 

まとめ

『マンション建替法』により建て替えを円滑に進めるための環境が整いつつあります。そろそろ建て替えの検討が必要な管理組合様も、そうでない管理組合様も「建て替え」とは何かを知るところから始まるのです。

そして次に気になるのが、分譲マンションの建て替えの現状はどのような課題があるのか。次回の修繕ニュース「分譲マンション再生における合意形成の課題とは?| 『建て替え』の流れや手続きについて解説」では、『マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替法)』に基づいて分譲マンションの建て替えを進める場合の流れや手続きについて解説していきます。

 

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