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大規模修繕

マンション大規模修繕工事で二次災害を防止|耐震ドア改修工事

2020.04.10
前編の「マンション管理組合で考えておきたい災害時の建物損傷に備える防災」でお伝えした通り、倒壊するリスクが低いといわれているマンションでも、直下型地震ではある程度の被害があることが予想されます。その被害について備えておくことも必要ですが、旧耐震基準マンションにお住いの方にとって、気になるのは新耐震基準と旧耐震基準でどれだけ被害に差があったのかということではないでしょうか。後編では直下型地震であった熊本地震での旧耐震基準マンションと新耐震基準マンションの被害の違いと、耐震改修の現状についてご紹介します。

旧耐震基準と新耐震基準で被害にどのくらい差があるのか



引用元:https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/61880/1/1hyoushi-kokoroe_1.pdf?20180801152300

マンション全体の被害についてのアンケート調査結果は前編でご紹介した通りですが、では旧耐震基準のマンションと新耐震基準のマンションでは被害にどの程度の差があったのでしょうか。国土交通省の発表している「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書」によると、熊本地震で被災した13市町村を対象とした調査では、鉄筋コンクリート造等建築物のうち10棟の倒壊・崩壊が確認されています。その他の住宅と比較すると倒壊しにくいといわれている鉄筋コンクリート造マンションでも倒壊した建物があることを考えると、直下型地震の恐ろしさを感じます。

しかし、この倒壊した建物の中には1981年以降に設計された新耐震基準の建物はなく、倒壊・崩壊が確認された10棟はいずれも旧耐震基準の建物であったということが確認されているのです。新耐震基準では震度6~7程度の地震で倒壊しないことが条件とされていますので、新耐震基準が守られていたことによって被害を抑えられたことが考えられるでしょう。

この結果を見て旧耐震基準のマンションにお住まいの方は、不安に思われるかもしれませんが、前回の記事でもご紹介した通り旧耐震基準の対象となる建物であっても必ずしも耐震性がないわけではありません。耐震基準が改正されることを見越して新耐震基準に適合するように建てられている、という場合もあるのです。

また、同調査によると旧耐震基準の建物でも、耐震改修を実施した建物での倒壊・崩壊はなかったという結果が出ています。旧耐震基準の建物だからといって必ずしもあきらめる必要はなく、耐震改修によって今の基準に適合させることによりこれから起きるかもしれない震災に対して備えることもできるのです。

耐震診断の実施率が低い理由



耐震改修を実施する場合には耐震診断をする必要がありますが、前編「マンション管理組合で考えておきたい災害時の建物損傷に備える防災」でご紹介した通り旧耐震基準のマンションで耐震診断を実施したのは34%と、多くのマンションでは耐震診断をしていないのが現状です。

その理由として多くの管理組合の頭を悩ませているのが、耐震診断自体にかかる費用だけではなく、耐震診断をするまで耐震改修の費用がわからないということです。さらに、耐震診断を実施した結果、現在の耐震基準に不適合となった場合は不適合であるということを売買する際や賃貸契約をする際に重要事項説明として明示しなければなりません。もちろん耐震改修を実施し、現在の耐震基準に適合させることができれば重要事項説明の説明対象にはならないのですが、耐震改修にかかる費用は耐震診断を実施しないと分かりません。耐震診断を実施した結果、耐震改修をすることが難しいほど高額だった場合、不適合であるという事実だけが残り、資産価値だけが下がることを懸念して二の足を踏む管理組合が多いのが現状です。

耐震診断を実施しないと分からない耐震改修費用ですが、実際に実施したマンションではどの程度の金額がかかったことが多いのでしょうか。古いデータにはなりますが、東京都都市整備局が実施した「マンション実態調査結果」によると、耐震改修工事費用として最も多いのは「500超~1000万円(22.6%)」次いで「1000超~3000万円(20.4%)」となっています。マンションの戸数によっては大規模修繕工事に近いほどの費用がかかってしまっていることから、もともとの長期修繕計画に耐震診断と耐震改修が組み込まれていない限りは修繕積立金でまかなうことが難しい金額ではないでしょうか。



引用元:http://www.mansion-tokyo.jp/pdf/03jittai-chousa/03jittai-chousa-01.pdf

上記の円グラフは耐震改修にかかった費用のグラフでしたが、同調査では一戸当たりの耐震改修費用についても公開されており、全体の戸数によってかなりばらつきがあることがわかります。201戸以上のマンションでは多くても一戸当たり50~70万円未満の負担になっているのに対し、1~20戸のマンションでは一戸当たり70万円以上となったのが合計60%、100万円以上の負担となった管理組合が40%と一戸あたりの費用負担に大きく差が開いているのです。小規模マンションは戸数が少ないため承認を得る人数は少なくて済みますが、1戸当たり100万円を超える金額を一時金として徴収する、または借り入れるというのは難しいのではないでしょうか。


引用元:http://www.mansion-tokyo.jp/pdf/03jittai-chousa/03jittai-chousa-01.pdf

この金額を見る限り、実際に耐震改修を行えるのかどうかを考えると、耐震診断自体を受けることが難しい……という管理組合が多いのも納得の数字かもしれません。では、このように大きな金額をかけて耐震改修を行うのが難しいと考えているマンションでも震災に備えて実施できる対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

大規模修繕工事で始める防災対策




国土交通省の発行している『マンション耐震改修マニュアル』では、耐震診断の方法や耐震改修の進め方以外に、構造以外の耐震対策についても記載されています。マンションの耐震性能については建物が崩壊しないというだけではなく、安全に避難できるように避難経路を保持したり、地震後も壊れることなくその機能を維持していることが人命を守ることやその後の生活を送る上で重要な観点となるためです。マンション耐震改修マニュアルではいくつかの項目に分かれて複数紹介されていますが、今回はその中でも大規模修繕工事で検討しやすい“玄関ドア”についての耐震対策をご紹介します。

発災時にドア枠がゆがむことで扉が圧迫され開かなくなってしまうと、二次災害で火災が発生した場合や早急に処置の必要な怪我をしている場合は命を脅かす危険があります。そうならないために、ドアが開かなくなることを防いだりドア枠がゆがんでも必要に応じて外へ避難することができるように玄関ドアの耐震対策をする必要があるのです。マニュアルには主に「耐震枠」と「耐震蝶番」の2種類が記載されています。

耐震枠とは地震によってドア枠に圧力がかかっても扉を圧迫しないよう、強度だけではなく構造上も工夫されているドア枠です。既存のドア枠を外して施工するとなると大がかりな工事になってしまいますが、修繕工事で後から耐震枠にする場合は現在のドア枠に重ねるように施工する“カバー工法”という工法で施工することができます。

それに対して耐震蝶番は、扉と壁をつないでいる蝶番部分だけを取り換える工事になります。耐震蝶番とは、蝶番の中にスプリングと呼ばれるバネが入っており、発災時にドアが圧迫されて蝶番に力がかかってもスプリングがある程度吸収してくれるため、通常の蝶番と比べると軽い力で開けることができるようになっている蝶番です。既存の扉はそのままに耐震蝶番へ変えることができるため、外観がほとんど変わらず比較的費用を抑えて耐震施工することができます。

またこの2種類のほかに“耐震ドア”と呼ばれるタイプの玄関ドアもあります。これは扉自体に小さな避難扉がついており、万が一玄関ドアが開かなくなってしまってもドアの中にある避難扉を開けて避難することができるのです。こちらもタイプによりますが現在のドア枠の上から施工することが可能になっています。

耐震ドア改修は建物自体の耐震性能を上げることはできませんが、二次災害の被害を減らすためには有効な手段といえます。旧耐震基準マンションでも新耐震基準マンションでもどの程度の被害を受けるかは、実際に発災してみないと分かりません。だからこそ、今できる最善の対策をしておくことがマンションにお住いの方全員を守ることにつながります。玄関ドアはマンションでは共用部分の扱いとなるため、個人で対策をすることが難しい場所になりますので、管理組合として防災対策の1つとして考えても良いのではないでしょうか。

 

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