初めて大規模修繕工事を検討されるオーナー様に押さえていただきたいポイント<前編>|社員インタビューvol.06

目次

不動産オーナー向け情報誌「家主と地主」5月号(4月15日発売)にて、大規模修繕工事が特集テーマとして掲載されました。特集にあたり当社がインタビュー取材を受けましたので、インタビュー当日の取材内容を前後編に分けてお届けします。今回は“前編”をご紹介します。
大規模修繕工事は必要と思っているが何から始めたら良いのか分からないといったお悩みの建物オーナー様をはじめ、当社の大規模修繕工事への取り組み方を知りたいマンション管理組合様など、皆さまにぜひご覧いただきたいと思います。

インタビュアー:志村 強 / 株式会社全国賃貸住宅新聞社「家主と地主」担当


インタビュイー:伊藤 正 / 株式会社ヨコソー リニューアル第三営業部 部長


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【見出し】
・建物規模の大小に係わらず工事をさせていただくヨコソー
・大規模修繕工事の適切なタイミングと手順
・大規模修繕工事を検討、比較する際のポイント
・建物を良い状態に維持するための考え方
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建物規模の大小に係わらず工事をさせていただくヨコソー




志村
本日はインタビューをさせて頂く中で大規模修繕工事において検討すべきポイントなどを教えていただけたらと思っていますので宜しくお願いします。
まず、「家主と地主(https://www.yanushitojinushi.com/)」という雑誌ですが、賃貸不動産オーナー様やマンション・アパートを所有されている地主様や投資家様に読んでいただいている雑誌となります。
2020年5月号では『建物の大規模修繕工事』を特集として掲載予定です。大規模修繕工事に関する各社の取り組みを通じて、オーナー様・家主様が“大規模修繕工事の必要性は感じているが何がポイントになるのか”といったお悩みに対して学びのある内容にしていきたいと考えいます。当社のグループ会社が発行しているリフォーム産業新聞(2020.01.27発行1394号1面)に掲載された「マンション大規模修繕売上ランキング」にて8位で掲載されていることからヨコソーさんに施工会社インタビューをさせていただきます。
8位ということでかなりの規模で展開されていると思うのですが、大規模修繕工事の施工棟数としては毎年どの程度施工されているのでしょうか。また、ヨコソーさんでは工事としては外壁・屋上・廊下などといった共用部の大規模修繕工事全般から給排水管などの設備工事までされているんですよね?

伊藤
昨年度ですと150棟程度を施工させていただきました。300戸を超えるような大規模なマンションから20戸のマンション、また、マンションのみならずオーナービルなどの建物も含めて規模の大小に係わらずお仕事をさせていただいていますし、工事内容についても大規模修繕工事全般のみでなく、給排水管といった設備に関しても専門部署がありますので工事をさせていただいています。

志村
家主(またはマンション管理組合)様が大規模修繕工事の施工会社を検討する場合は、基本的には管理会社様にお任せするケースが多いのでしょうか?

伊藤
当社に声を掛けていただくお客様の場合は、ホームページ等で施工会社を探されて、その中から何社かを選ばれて相見積りを取られる候補としてお問い合わせをいただく場合が多いですね。割合としては大きくはないのですが、自主管理の家主様から直接ご依頼をいただく場合もございます。最近では当社ホームページ(https://www.yokosoh.co.jp/)をご覧いただき、お問い合わせを頂戴して受注させていただくことも増えてまいりました。

大規模修繕工事の適切なタイミングと手順




志村
大規模修繕工事は10年から12年に一度といったタイミングかと思うのですが、ヨコソーさんとしては適切なタイミングというのはどのようにお考えでしょうか?

伊藤
仰っていただいたように、やっぱり適切なタイミングとしては12年から15年に一度くらいは大規模修繕工事をしていただいたほうが、適切な修繕ができてオーナー様にもメリットがある標準的なスパンということで言われておりますので、12年から15年を目途に考えていただけると良いのかなと思います。

志村
大規模修繕工事の検討を進める手順を教えてもらえますか?

伊藤
オーナー様やマンション管理組合様といったお客様からご相談をいただいたらまずは建物を見せていただき、劣化している箇所を調査して、建物診断調査結果報告書を見ていただきながら劣化状況に合ったお見積書をご提出させていただくというのが一般的な流れですね。建物診断では各診断箇所の劣化部位をはじめ、例えば塗装部分については現在の塗装がきちんと壁に付着しているかといった塗装の付着強度を調べる“引張試験”を専用の機械を使って実施したりですとか、シーリング(壁の目地部分などに気密性や防水性向上を目的に充填されているもの)の性能がきちんとあるのか、伸び縮みしなくなったりはしていないかなどはサンプル調査として切り取らせていただいて材料メーカーにてダンベル試験(弾性計測による劣化調査)を実施しています。その他必要な劣化状況の調査をした上で、調査結果を根拠にして劣化状況を判断して報告書を作成しています。

志村
報告書をもとに見積書を提出されるわけですね?

伊藤
そうですね。お見積りは全ての劣化箇所を修繕するフルスペックのパターンをベースにご提出させていただきます。その他のパターンでもご提出させていただくこともあり、例えば、廊下の床の塩ビシートにそんなに劣化が見られない場合はこの部分は足場がなくても施工できるため大規模修繕工事の数年後に工事をすることでも大丈夫そうですねといったご提案も行いながら、建物の劣化状況とお客様のご要望やご予算を踏まえて調整をしたパターンなどをご提出しています。

志村
ここまでの、建物の調査をして、見積りを作成し、その後の提案といったところまでは基本的に無料なのでしょうか?また、オーナー様や管理会社様はやはり相見積もりを取られることが多いのですか?

伊藤
はい、基本的に無料で対応しています。
相見積りについては、やはり一社だけでは価格の妥当性が分からないので何社かに声を掛けられてお見積りを取られていることが多いですね。

大規模修繕工事を検討、比較する際のポイントとは




志村
相見積りが多い場合は価格の叩き合いになるかと思いますが、オーナー様は価格以外の面ではどのような部分を比較されるのでしょうか。

伊藤
建物診断調査報告書ですとか見積書をはじめとした“ご提出書類の精度”を見ていただくとその会社の力量というのが表れてくると思います。当社のお客様からは、「ヨコソーは価格が一番安かったわけではないけど保証内容が分かりやすかったり、仕様書(どのような材料を使いどのような方法で工事を行うかが記載された書類)も使って説明してくれたので信頼できる企業として判断した」というようなお声もいただくことがあります。
価格だけの競争となると必ずしも当社が毎回一番お安くできるわけではありませんが、価格以外の部分や仕事に対する姿勢などを含めてお客様にご検討いただくことが多いですね。

あとは会社規模も気にされている方が多いです。例えば、屋上防止工事に対して10年間の保証がある場合、いくら10年間の保証期間があってもその企業が継続できていなければ保証の意味がなくなってしまい、お客様も困られてしまいますよね。企業の経営状態も含めて総合的に比較判断していただくようにお話ししています。当社は社業としては111年以上やっていますので、継続という意味での信頼をいただけることは多いですね。

志村
先ほど「報告書の精度」というお話しが出ましたが、これは企業によって差が出やすいものなのですか?

伊藤
そうですね、各企業様によって調査内容や調査方法は異なりますし、見積書の作成方法も大きく異なりますね。
同じ工事を見積りする場合でも、塗装の見積でざっくりと塗装●●円/千㎡といった内容で示される企業様もいらっしゃいますが、当社では廊下の手摺り部分は●●㎡あるですとか部位ごとに細かく算出をして、そこにどのような仕様で工事をするか明示した上でお見積りをご提出させていただいていますので、その部分でお客様から信頼していただけることが多いと感じていますし、信頼を得られるように努力をしています。

志村
他にも先ほど「屋上防水10年間」といった保証のお話しがでましたが、他にはどんな保証があるんでしょうか。

伊藤
基本的には各メーカー様と連名で保証を出させていただいています。
代表的なものの紹介として、躯体補修といいまして工事でひび割れを直したりですとか外壁がタイルの建物でしたらタイルを張替えたりしますよね。当社が施工させていただいた箇所で再発した場合、例えば当社が張替えたタイルが浮いてしまったり割れてしまったという際には5年間の保証をしています。
他には、外壁塗装でしたら塗った塗装が剥がれてきてしまった場合にはシリコンやフッ素など使う材料によって、7年間や5年間といった使用材料ごとの保証期間があります。あとは鉄部塗装工事がありまして、鉄の部分には外壁塗装とはまた違う材料を塗装しますので、基本的には2年または3年間の保証の場合が多いですね。防水工事では屋上へのメンブレン防水(membrane=薄い膜。耐水性のある連続皮膜を表面に形成する工法)や下に居室がある場所については基本的に10年間の保証を、廊下やバルコニー部分については5年間の保証を出させていただく場合が多いですね。

建物を良い状態に維持するための考え方




志村
見積りの話や保証期間の話とも関係してきますが、材料の選択や工法の選択によって長持ちさせられるかどうかといった差は出るわけですよね?

伊藤
はい、そうです。例えば、塗料のお話しをしますと、フッ素樹脂の塗料は耐用年数(※保証年数ではありません)が20年以上といわれています。シリコン樹脂の塗料は15年程度、ウレタン樹脂の塗料はだいたい10年程度、最後にアクリル樹脂の塗料がだいたい7~8年程度で劣化してくるといわれています。
マンションの新築工事の際によく使われるのは最後のアクリル樹脂の塗料ですので、だいたい10年程度経過すると表面的にもチョーキングという塗装面が白くなる塗料の劣化が見られるようになります。それで、おおよそ12年~15年程度のスパンで塗り替え工事をするのが良いですよねというお話しをしているのです。

それ以上の期間をあけると塗料の劣化がさらに進んで塗料が剥がれてきてしまい、剥がれるとそれを直す(一度きれいに剥がしてから塗り直す)のに塗りなおす以上の費用がかかるので、剥がれる前に塗り替え工事をしていただくのが良いですよとお伝えしています。

志村
塗装の塗り替えの場合は基本的には今の塗装の上から重ねて塗るんでしょうか?

伊藤
引張試験をして塗装の付着強度があれば塗り重ねすることが可能ですので、上に塗り重ねできるタイミングの中で塗り替え工事を実施していただきたいですね。それから、防水材である壁の目地などに使われているシーリングの耐用年数はだいたい10年間程度なんですね。ですから、12年から15年の期間で塗装を塗り替えたり、シーリングを打替えたり(交換したり)といった防水処置を再度していただくのが良いのではというお話しなんですよね。これらの根拠や考えから、先ほど適切なタイミングはというご質問でお答えした「12年から15年間周期での大規模修繕工事」という話につながっていくわけです。

志村
ちなみに先ほどフッ素樹脂の塗料の耐用年数が20年とお聞きしましたが、ヨコソーさんが塗装の塗り替えでご提案されるのはどの材料のものをご提案されるのでしょうか?

伊藤
当社からは耐用年数が15年程度とお話ししたシリコン樹脂の塗料でご提案させていただくことが多いですね。管理会社様や設計事務所様が元請や監理者として入られている場合でも、やはり同じ塗料でご提案させていただくことが多いです。
その理由は、耐用年数が20年以上のフッ素塗料を使用したとしてもシーリング材が20年間持たないんですよね。足場を架けるのに大きな金額がかかるのでシーリングの打替え工事だけのために足場を架けるのはもったいない話ですよね。ですから、シーリングの耐用年数とも近いシリコン樹脂の塗料を使うことで、修繕周期を合わせて修繕していけるようご提案をして、ご選定いただくことが多いですね。タイミングを合わせてオーバースペックではないもので工事をしていただく。つまり、修繕周期の期間はきちんと性能を保ち、タイミングに合う中で一番良いもので工事をしていただくのが良いと思います。

例えば海が近くにあるというような劣化しやすい環境などもありますので、そのような場合にはシリコン樹脂ではなくフッ素樹脂をご選定される管理組合様やオーナー様もおられます。先ほどのシーリングの耐用年数のお話なども含めすべてご説明させていただいた上で、管理組合様やオーナー様のお考えで最終的に決定していますね。
特にオーナー様(家主様)の場合には、少しでも修繕周期を長く伸ばしたいとお考えになられる方が多いようにも感じます。シーリングが持たないかもしれませんよというご説明をしても、塗料は耐用年数が良いものを使用して、それ以外の部分の修繕は少しずつやっていくプランをお考えで実行される方もいらっしゃいますね。

<この続きは後編にて>

前編では大規模修繕工事を検討するにあたっての適切なタイミングやよく見ていただきたい検討ポイント、建物の状態をうまく維持していくための考え方などのインタビューをご紹介しました。
次回、後編ではオーナー様にも知っていていただきたい工事における悩ましいポイントや工事の安全性向上に対する取り組み、そして資産価値向上やアフターメンテナンスについてのインタビュー内容をお届けしたいと思います。後編公開時にはぜひご覧ください。

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