「屋上防水工事」の種類とは?施工方法や実施タイミングについてわかりやすく解説

屋上防水工事は、マンションやビルなどの建物の寿命を左右する重要な工事です。屋上のメンテナンスを怠ると漏水が起きるだけでなく建物自体の耐久性及び資産価値にも大きく影響します。

今回は、マンションの「屋上防水工事」とは何か、屋上防水工事の種類や実施タイミング、押さえるべきポイントなどを解説します。「屋上防水工事がどのような内容なのかよく分からない」「マンションの屋上防水工事を検討している」という方はぜひご覧ください。

目次

ンションにはなぜ屋上防水工事が必要なのか

屋上は建物を雨風から守る重要な役割があります。最も雨風にあたる屋上のメンテナンスを怠り防水性能が低下してしまうと室内へ雨水が漏水し大きな被害が出ることはもちろん、コンクリートから浸水した雨水で内部の鉄筋が腐食し建物自体の耐久性まで影響を及ぼしてしまうのです。漏水が一度起こってしまうと連鎖的に劣化を進行させ、マンションの資産価値を著しく低下させてしまう原因につながります。防水性能を維持して漏水させないために、適切なタイミングで屋上防水工事を行うことが大切なのです。

 

マンションの屋上防水工事の種類

マンションの屋上防水工事の種類は大きく4つに分けられます。

 

■ウレタン塗膜防水

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ウレタン塗膜防水とは、液状のウレタン防水材を塗り重ねて厚みを作ることで防水層を形成する防水工法です。屋上やバルコニー、側溝、庇(ひさし)などさまざまな箇所で用いられる防水の工法であり、液状の防水材を使用するため複雑な形状の場所でも施工可能であり、シームレスな見た目にできることも大きな特徴です。

また、施工箇所や既存下地の状態によりウレタン塗膜防水には「密着工法」と「通気緩衝工法」の2つの工法があります。密着工法は既存下地がウレタンの場合に使用できる工法で、密着性を高めるプライマーを塗布した後、ウレタン防水材を塗り重ねます。ウレタン防水材の硬化後、最後に紫外線などから防水層を保護するためトップコートを塗布します。

一方、通気緩衝工法は既存下地がコンクリートの場合に用いられ、通気緩衝シートを貼った後に湿気を逃がすための脱気筒を取り付け、その上からウレタン防水材を塗り重ねます。密着工法と異なり、コンクリートから上がってくる湿気を逃がすための脱気筒を設置するため、屋上やルーフバルコニーなど広い面積の施工に適しています。

■アスファルト防水

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アスファルト防水はアスファルトシートを貼り重ねて防水層を形成する工法で、マンションやビルの屋上で多く採用されている防水工法です。アスファルトシートは「アスファルトルーフィング」とも呼ばれ、合成繊維不織布にアスファルトを混合した防水シートです。アスファルトシートを屋上下地に熱や接着剤で密着させることで耐久性に優れた防水層となります。

 

■塩ビシート防水

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塩ビシート防水は、塩化ビニル樹脂製の防水シートを接着剤や機械で貼り付けて防水層を形成する工法です。塩ビシートは耐久性・耐摩耗性があり、一度に広範囲の施工が可能なため低コスト・短期間で施工できます。貼り付け方法の違いによって工法が分かれており、特に屋上防水工事で多く見られる「機械的固定工法」は、下地の影響を受けにくいため防水層にひび割れや破断が起きにくく、下地に直接シートを密着させるのではなく隙間を作ることで下地の水分を逃がすことができるという特徴があり工法であり、「絶縁工法」とも呼ばれます。

他の屋上防水工事と比較すると、コンクリート用電動ドリルでディスクを屋上下地に固定するため、作業中は作業している下の階のお部屋にかなりの振動や騒音が響いてしまいますが、接着剤を使わずに既存防水層の上からディスクで防水シートを接着するため撤去費や廃材処分費を抑えることができ環境にも優しい工法です。

 

FRP防水

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FRPとは繊維強化プラスチックのことで、FRP防水は防水性に加えて軽量かつ強靭な防水層を作ることが可能なことから、船や貯水槽、浴槽、プールなど多くの場面で使用されています。

ポリエステル樹脂を塗布してからシート状のFRPを張り付け、防水用ポリエステル樹脂を上から塗り重ねて硬化させます。硬化後は防水層を紫外線から保護するためのトップコートを塗布します。

 

屋上防水工事を行う最適なタイミング

マンションの屋上防水工事は大規模修繕工事のタイミングで行うのが一般的です。大規模修繕工事では建物外周に足場を組み立て、外壁・バルコニーの塗装工事や防水工事などを行います。屋上防水工事においても安全のために足場が必要なことから、大規模修繕工事のタイミングで行うことで足場仮設などの必要経費をまとめることができます。
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインにおいても、屋上防水工事及び外壁塗装、バルコニー床防水、シーリングなど大規模修繕工事の修繕周期の目安はともに「1215年」とされています。

しかし、屋上の劣化状態によっては大規模修繕工事よりも前に防水工事が必要となる場合があります。屋上防水の点検を定期的に行い、予算や修繕サイクルなどを総合的に判断して屋上防水工事を行うタイミングを考える必要があります。

 

屋上防水の劣化のサイン

次に示すのは、屋上防水工事を行うタイミングの目安となる劣化のサインです。劣化症状のいずれか1つ以上当てはまる場合は、防水機能が低下しているため屋上防水工事が必要です。

屋上を点検する際は、足元に十分注意して行ってください。

 

防水シートの剥がれ・破れ

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防水シートの剥がれ・破れ・めくれは、シート同士のつなぎ目部分やシートの端部で発生しやすい劣化のサインです。防水シートの接着が甘いと経年により剥がれなどが発生し、そこから防水層の下に雨水が浸入する恐れがあります。

 

防水シートの膨れ・浮き

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防水層の下に浸入した水分が太陽光などの熱で蒸発し、逃げ場を失った湿気がシートを押し上げることで膨れや浮きが発生します。湿気を逃すために「脱気筒」を取り付けていたとしても脱気が追い付かずに膨れてしまうこともあります。

 

防水層のひび割れ

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地震などの挙動により防水層にひび割れが発生すると、ひび割れ部分から雨水が入り込み漏水が起こる場合があります。特に屋上のパラペット(屋上などの外周部に設けられた低い立ち上がり部分)や、手摺の架台(設備などを建物に固定するための土台となる構造)などで多く見られます。

 

水たまりが残る

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雨が降った数日後でも水たまりが残っている場合は注意が必要です。勾配不良や排水溝の位置が高いと水たまりが発生し、水はけが悪い状態が続くと防水層を傷める原因となります。雨が降った後の屋上に顕著な水たまりがないか、晴れた日に水たまりの跡が残っていないかなどを点検してみましょう。

 

泥や土が溜まっている・雑草が生えている

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雨風によって泥や土が堆積し、植物の種が飛来することで屋上に雑草が生えてしまう場合があります。雑草の根が成長することで防水層を突き破り、防水層の下に雨水が浸入してしまいます。特に屋上の隅や排水溝などに雑草が生えやすいので定期的な清掃を行いましょう。

 

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まとめ

今回はマンションの「屋上防水工事」について詳しく解説してきました。屋上は建物の寿命を左右する重要な部位であり、屋上のメンテナンスを怠ると建物自体の耐久性や産価値に大きく影響します。漏水が起きる前に適切なタイミングで屋上防水工事を行うことが大切です。

 

マンションの修繕・改修に関してお困りごとがございましたらお気軽にヨコソーまでご相談ください。

 

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