大規模修繕工事におけるアフターメンテナンスの重要性とは? ~マンションを長く大切に使うために~

大規模修繕工事が終わると、管理組合や居住者は「よし、一段落ついた」という気持ちになります。しかし、”建物の維持管理”という点では、ここからがスタートです。外壁や防水、鉄部塗装など建物の劣化は年月とともに進行します。重要なのは、工事後のアフターメンテナンス。今回の修繕成功Magazineでは、建物を長寿命化するアフターメンテナンスの重要性と実施時期、具体的な対応内容を解説します。(株)ヨコソーのアフターメンテナンス部所属の萩原巧サブマネージャーと土井秀明主任に話を聞きました。

目次

アフターメンテナンスとは

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(株)ヨコソーアフターメンテナンス部 萩原巧SM(左)・土井秀明主任

大規模修繕工事後に発生する不具合に対し、施工会社が補修や点検を行う仕組みをアフターメンテナンスといい、工事完了時に契約する大規模修繕工事かし保険に基づいて実施されます。メンテナンスの対象や内容、保証期間は工事項目ごとに定められています。主な保証対象は次の通りです。

  •   防水層の膨れ・傷
  •   外壁仕上げやタイルの浮き・剥離
  •   シーリング材の切れ・隙間
  •   手すりや鉄部塗装の剥がれ・錆
  •   雨漏りの発生


アフターメンテナンスは、保険がカバーする保証対応だけではなく、建物を長持ちさせるための保全活動でもあります。萩原サブマネージャーは、「少しでも気になる箇所があれば、遠慮なくお知らせください。特に雨漏りは早期発見・早期対応が大切です」と話します。大規模修繕工事の完了後もしっかり管理することで、建物の劣化が最小限に抑えられ、建物の長寿命化につながるのです。

アフターメンテナンスの実施時期と費用

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アフター点検は、次のように進めるのが一般的です。

実施時期 内容
1年後 外観・防水・シーリング・塗装などの初期確認
2年後 中期点検。外壁や防水の経過観察を実施。
5年後 長期点検。保証期間満了前の最終確認
10年後 長期点検。保証期間満了前の最終確認 ※

※保証期間は保険の種類や工種によって異なります。
大規模修繕工事の際に交わす「アフター点検誓約書」の内容がベースとなります。一般的に鉄部塗装は3〜5年外壁・防水は5〜7年とするケースが多く、屋上防水は7~10年が目安です。

不具合が見つかった場合の補修工事費用は、保証期間内であれば施工会社が負担します。 一方、保証期間が過ぎた箇所や自然災害による損傷など、保証外となるケースがあります。そのような場合でも早めに施工会社へ、状況確認を依頼し、原因の特定や必要な工事内容・費用を算出してもらうことをおすすめします。不具合はきちんと直す必要がありますが、今すぐ補修すべきか、少し先でも問題ないのか、アドバイスしてもらいましょう。

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アフターメンテナンスの具体的な流れ

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1年点検廊下手すり壁欠損

アフターメンテナンスの流れを具体的にみていきましょう。

1.点検の案内 施工会社から管理組合へ、点検時期や日程の案内が届きます。居住者にアンケート調査を行うこともあります

2.現地確認 アフター担当者と管理組合が立ち会い、外壁や防水箇所など共用部分を目視点検します。アンケートの回答で指摘があれば、専有部分も確認します

3.不具合箇所の報告 点検結果を報告書にまとめ、居住者からの申告事項と合わせて整理します

4.補修工事の実施 保証範囲内であれば無償補修、対象外の場合は別途見積もりのうえ補修工事を実施します

5.報告書提出・記録保管 補修完了後、施工会社から報告書が提出され、管理組合で保管します

以上が年次ごとの点検の流れです。

鉄筋コンクリートの耐用年数は120年ともいわれていますが、塗装の小さな膨れや防水シートのわずかな切れ目を放置すれば、雨水が入り込み下地や鉄筋を腐食させることになりかねません。適切な維持管理とアフターメンテナンスがマンションの寿命を決定づけると言っても過言ではありません。不具合に関する細かいやり取りを重ねることで、管理組合と施工会社の信頼関係が深まり、蓄積した建物情報は次回の大規模修繕工事にも生きてきます。

マンション居住者の役割

4-1.不具合の例 塗装のふくらみマーク.webp
手すりの塗装の膨れ
4-2.不具合の例 塗装のふくらみ.JPG
気温が下がると膨れがぺちゃんこに

アフターメンテナンスの流れをみてきましたが、アフターのタイミング以外で不具合が発生したら、どのように対応したらよいのでしょうか。

ここは、居住者の出番です。

例えば、塗装の一部が膨らんでいたとしても、点検の時に気温が下がれば膨れがしぼんで平らになり、ベテラン技術者でも見逃してしまうことがあります。 居住者がそのような不具合に気づいたら、▷管理組合・理事会の理事に報告▷マンション管理員から管理会社へ報告▷メモ書きなどを管理組合理事会のポストに投函する―等の方法で報告してもらいましょう。そのための体制整備として、常日頃から建物の状態に目を配り、長く大切に使うことを意識するよう『理事会からのお知らせ』などで呼び掛けておくと報告しやすくなるかもしれません。遠慮なく不具合を報告することで建物が良い状態に保たれ、マンションライフの快適性が増し、資産としてもマンションの価値が向上することになるでしょう。

専有部分も点検を

5.1年点検玄関扉上部漏水跡 マーク.JPG
玄関扉上部漏水跡

大規模修繕工事を行い外壁やエントランスなどの共用部分が綺麗になると、「同時に専有部分も綺麗にしたい」という方も少なくありません。土井主任は、「点検の時期に合わせて、居室の内装など専有部分の改修工事を希望される方もいらっしゃいます。本来のアフター点検とは別ですが、ご希望があれば、点検を承ります」と話しています。

たとえば、

  •   玄関扉やサッシの調整
  •   バルコニー床の塗り替え
  •   専有部のクロス貼り替え
  •   水まわりのリフォーム
  •   給湯器の交換


――などを検討している場合、同じ施工会社に相談することは、安心かつ合理的だといえます。アフター点検は単なる「不具合確認の機会」ではなく、住まい全体のメンテナンスを見直すチャンスでもあるのです。

㈱ヨコソーでは大規模修繕工事のノウハウを持ったリフォーム専門チームが改修工事を担当しております。

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まとめ

大規模修繕工事のアフターメンテナンスは、建物の品質を守るための重要なプロセスです。しっかりとしたアフター対応を行うことで、建物の長寿命化を図り、次回の大規模修繕計画にも役立てることができます。
居住者として意識したいポイントは次の二つ。

  1.  小さな不具合でも遠慮せず早めに伝える
  2.  点検には積極的に立ち会う

施工会社とは「工事が終わったら関係も終わり」ではなく、「終わってからが付き合いの始まり」。施工会社と管理組合・居住者が一丸となって建物を見守り続けることが、真の〝修繕の成功〟につながります。

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