勾配屋根のマンション修繕・改修・メンテナンス方法とは?劣化のサインや注意点も解説

マンションなどの建物を雨風から守る屋根は、「防水」が建物の寿命を左右するといっても過言ではありません。屋根は建物をメンテナンスする上で重要な部位の1つです。今回は勾配屋根のマンションにおける防水工事の改修方法や劣化のサインについて詳しく解説します。

目次

ンションの屋根は大きく2つの形状に分かれる

■ 陸屋根

『陸屋根(ろくやね・りくやね)』とは“屋根”とついていますが、戸建て住宅のような斜めの形状ではなくフラットな形状で、一般的に「屋上」と同じ意味で使われているケースが多いです。陸屋根は一見平面に見えますが、排水溝に向かってわずかな勾配が付いており、排水溝に集められた雨水は雨樋と呼ばれる配管を伝って地上に排水されます。
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■ 勾配屋根

『勾配屋根』とはその名の通り斜めに勾配が付いている屋根をいいます。戸建て住宅などで多く見られますが、マンションなどでも採用されることがある屋根形状です。雨水が雨樋に流れるように建物形状に合わせて傾斜が付いています。
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今回は勾配屋根の防水をテーマに解説します。陸屋根の防水についてはこちらの記事をご覧ください。

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勾配屋根の主な改修・メンテナンス方法

勾配屋根の改修・メンテナンスには既存下地に合わせてさまざまな方法があります。具体的にどのような改修方法があるのか確認していきましょう。

 

■ アスファルトシングル葺き

アスファルトシングル葺きは、勾配屋根のマンションでよく採用されている防水工法です。アスファルトシングルはガラス繊維基材にアスファルトを配合し表面に石粒を吹付けた屋根材であり、シート状で柔軟性に優れるため複雑な形状の勾配屋根にも施工することができる特徴があります。

 さらに改修方法については既存アスファルトシングルの劣化状況に合わせて次の3つがあります。

①葺き替え工法(全面撤去工法)

屋根の劣化や痛みがひどい場合は、既存の屋根材を全て撤去して新しい屋根材を施工する「葺き替え」を行う必要があります。葺き替えは、アスファルトシングル葺きの改修方法の中で最も大がかりな工事となります。 

アスファルトシングルの葺き替えは、まず既存の屋根材を全面撤去し下地の状況に合わせて補修を行うことが必要です。風による剥がれの対策と雨水による漏水対策をしたら、アスファルトルーフィングと呼ばれる下葺き材(アスファルトシングルを貼るための下地)を10cm程度重ねて隙間なく屋根全体に貼付けます。
下地が整ったら、釘や接着剤を使って水下側の軒先からアスファルトシングルの基材(表面に石粒の付いた仕上げ材)を貼付けていきます。棟(屋根の頂上部分)はアスファルトシングルを多めに貼り重ねて接着剤で固定して完了です。

②被せ工法(重ね葺き工法・カバー工法)

特に1回目の改修工事で既存のアスファルトシングルの状態が良好な場合は、その上に重ねて張る「被せ工法」が多く採用されています。

アスファルトシングル葺きの被せ工法は屋根全体を高圧水洗浄した後、既存アスファルトシングルの劣化補修を行います。次に水切り金物を周囲のアスファルトシングルと一緒に撤去し、新規の金物に交換します。葺き替え工法と異なるのは、屋根材全面を撤去するのではなく水切り金物とそれに付随する屋根材1枚分のみを撤去する点にあります。
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軒先の水切り金物及び屋根材を撤去した様子

その後、既存アスファルトシングル葺きの上に下地活性材を全面に塗り、アスファルトルーフィングの貼付け以降は①の葺き替え工法と同様の手順で施工して完了となります。

③保護塗装

既存の防水層が健全な場合は保護塗装のみのメンテナンスを行うケースもあります。アスファルトシングルには石粒が吹付けられており、経年劣化や雨風によって石粒が剥がれていくことが考えられます。保護塗装は美観や耐久性を保つためにも有効な改修方法です。油性塗料はアスファルトの成分が溶け出してしまうため必ず水性の塗料が使用されます。

 

■ 塩ビシート防水

勾配屋根の改修方法として、塩ビシート防水の「機械的固定工法」という工法もあります。機械的固定工法は絶縁工法とも呼ばれ、下地に直接シートを密着させるのではなく隙間を作るので、どのような下地でも施工可能であり、下地の影響を受けにくいため防水層にひび割れや破断が起きにくいのが特徴です。

アスファルトシングル葺きと比較した際のデメリットとして、作業中に騒音と振動が発生することが挙げられます。下地コンクリートに穴を開けてアンカーを打ち込むため、特に最上階のお部屋は数日程度不規則に騒音と振動が発生します。発生する場合は、事前に施工会社から案内があるはずですので必ず確認するようにしましょう。

 

勾配屋根の劣化のサイン

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■ アスファルトシングル葺きの場合

アスファルトシングルの剥がれや浮きが発生していると劣化が進行しているサインです。特に急勾配の屋根や、建物に対して吹き上げの風の強い海沿いや高台にあるマンションなどではアスファルトシングルの接着強度が弱まり、剥がれや浮きが発生しやすくなります。長年風に煽られ続けると破れた破片が飛散する恐れもあるため、特に台風などの悪天候の後は剥がれや浮いている箇所がないか点検しましょう。 

また、アスファルトシングル表面をコーティングしている石粒も劣化を表す重要なサインです。経年劣化や雨風などにより石粒がぽろぽろと剥がれ落ちてしまうと耐久性・耐水性が低下していきます。そのため表面の石粒がどの程度残っているかもチェックしておくと良いでしょう。

 

■ 塩ビシート防水の場合

塩ビシートに膨れや剥がれ、浮き、破れている箇所などがないかを確認します。特にシート同士のつなぎ目の部分や軒先などの端部が劣化しやすい場所です。

しかし、塩ビシート防水の場合、目視では確認できない不具合や「ピンホール」と呼ばれる針の先のような小さい穴から雨漏りを起こすケースなどもあります。
通常、漏水が発生してしまった場合は排水溝を塞いで水を溜めて水位を確認する「水張り試験」を行いますが、勾配屋根の場合は水を溜めることができないため水張り試験を行うことができません。ただし、塩ビシート防水に限っては「電気試験」という方法で漏水箇所を調査することが可能です。防水層に穴が開いていた場合、電気試験により電気が流れることで漏水の原因を素早く特定することができます。

 

■ 勾配屋根を点検する際の注意点

一般的に勾配屋根は陸屋根(屋上)があるマンションとは異なり、人が出入りすることを想定して作られていないため手摺などの落下防止措置が設置されていません。ご自身での点検は大変危険ですので専門家による調査やドローンを使った調査をおすすめします。

もし最上階やルーフバルコニーなどから見える範囲で劣化確認をしたいという場合は、柵や手摺から身を乗り出さず、十分注意して点検作業を行ってください。

 

まとめ

今回は勾配屋根の改修・メンテナンス方法について詳しく解説してきました。ご自身のマンションの屋根の劣化状況や建物の形状、立地条件、予算、修繕サイクルなどを総合的に検討して、長期的な修繕計画をもとに最適な改修方法を検討することが大切です。

 

マンションの修繕・改修に関してお困りごとがございましたらお気軽にヨコソーまでご相談ください。

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