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【2026年法改正】大規模修繕工事で求められるアスベスト調査の義務と安全対策とは?(オンラインセミナーより)
こうした対応は、法令を遵守するためだけではありません。マンションの資産価値を守り、快適な住環境を維持するためにも欠かせない取り組みなのです。
今回の修繕成功Magazineでは、(株)ヨコソーのオンラインセミナーVol.04をもとに、アスベスト問題と発注者(管理組合)が何をすべきかについてご説明します。
アスベスト問題とは ― 健康被害と規制の背景
アスベストは、曲げや引張りに強く、不燃性・耐久性・断熱性に優れていることから、かつては建築材料として広く使用されていました。耐火材料として人命や財産を守る役割を果たした一方で、極めて微細な繊維を吸い込むと肺に蓄積し、中皮腫や肺がんなど深刻な健康被害を引き起こすことが分かっています。発症まで数十年かかることもあり、過去に使用された建材が現在もリスクとして残っています。
日本ではアスベスト規制が段階的に強化され、現在は製造・使用が原則禁止されています。また、飛散防止対策を徹底するため、有資格者による事前調査や調査結果の説明、記録保存などの制度も整備されました。
2014年には、届出義務者が施工者から発注者へ見直され、事前調査結果の説明義務化や立入検査の強化などが行われました。さらに2026年の改正では、建築物に加え、設備や配管などの工作物についても有資格者による事前調査が義務化されました。
大規模修繕工事とアスベストの関係性
以上のことから分かるように、2006年9月1日以前に着工したマンションの大規模修繕工事では、既存建材の切断や撤去などを行う際に注意が必要です。
アスベストの飛散リスクが生じやすいのは次の工事です。
- 外壁補修(塗装・下地調整材、Uカット作業)
- 天井補修(塗膜の除去)
- アスファルト防水の撤去
- シングル屋根の張替え
- 内装工事(Pタイル、巾木、接着剤)
- 配管更新時の保温材撤去
また近年は、仕上げ塗材や下地調整材に含まれるアスベストについても注意喚起が行われています。
注意すべき建築年代とリスク要因
大規模修繕工事の発注者である管理組合がまず確認したいのは、建物の着工時期です。2006年9月1日以前に着工したマンションは事前調査を行わなければなりません。
過去の改修履歴が不明な場合や、設計図書・使用材料の記録が不足している場合は、調査漏れが生じるおそれがあります。
次の資料や情報も整理しておきましょう。
- 竣工図書・設計図書の準備
- 使用材料の情報整理
- 過去の調査結果の保管・共有
過去にアスベスト調査を実施している場合は、調査結果を施工会社に開示することで、同じ調査を繰り返さずに済みます。
管理組合では理事会役員が交代しても調査実績や関連資料を確実に引継げるよう、資料目録などを整えておきましょう。
アスベスト調査義務化のポイント ― 法的根拠と対象範囲
有資格者によるアスベストの事前調査・結果等の報告が義務付けられている工事は、
- 解体工事:床面積の合計が80㎡以上
- 改修工事:請負金額100万円以上
- 工作物工事:請負金額100万円以上
です。
また、アスベストは、その飛散性と危険性に応じて「レベル1~3」に分類されており、レベルによって必要な対策が異なります。
レベル1(飛散性)
最も危険性が高いのが「レベル1(飛散性)」、鉄骨の耐火被覆や天井裏などに使われる吹付け材です。アスベストの含有率が高く、繊維が空気中に飛散しやすいため、除去時には厳重な飛散防止措置が必要です。
レベル2(準飛散性)
配管の保温材や断熱材などに使用されるアスベストは「レベル2」です。外側のカバーによって保護されていますが、問題となるのは、劣化や損傷によって内部が露出した場合です。撤去時には適切な養生や処理が求められます。
レベル3(非飛散性)
床材やボード類などに含まれる「レベル3」のアスベストは固形化されているため、通常状態では飛散しにくい建材です。ただし、改修工事などで破砕・切断を行うと、粉じんとして飛散する可能性があります。
近年は外壁の仕上げ塗材や下地調整材に含まれるアスベストについても注意喚起が行われています。
【参考】国土交通省「目で見るアスベスト建材」
管理組合に求められる対応とは

それでは、発注者である管理組合の役割を確認していきましょう。
管理組合には、
- 竣工図書や過去の調査結果などの調査資料を提供すること
- 有資格者による事前調査が適切に実施されているか確認すること
- 調査結果の掲示や居住者への周知に協力すること
- アスベストが確認された場合の追加費用や工期変更について理解すること
- 必要に応じて居住者へ説明を行うこと
―などが求められます。
特に、④で追加費用や工期延長が不可避となった場合、その理由や必要性を居住者へ丁寧に説明し、理解を得なければなりません。また、除去作業を実施した場合、施工状況(使用工法・範囲)や飛散防止措置などの状況の写真記録を原則3年間保管することが義務付けられています。施工会社が記録作業を円滑に進められるよう、写真撮影についても事前に居住者へ周知しておきましょう。
アスベスト除去・処理にかかる費用と助成金・補助金
アスベスト対策では、事前調査や除去工事、飛散防止措置などに一定の費用が発生します。これらは建物の適切な維持管理だけでなく、現場作業員で作業する人の健康と安全を守るためにも欠かせません。そこで、民間建築物のアスベスト調査や除去工事については、国の支援制度を活用した自治体の補助制度が設けられています。大規模修繕工事を予定している管理組合は、工事計画の初期段階で自治体の担当窓口へ相談しておくとよいでしょう。
補助制度を活用するうえで特に注意したいのは、アスベスト補助金は「あとから申請」ができない点です。調査・設計段階で制度を確認し、「申請してから工事」という順序を守ることが重要です。
主な自治体の補助制度(2026年5月現在)は、次のリンク先をご参照ください。
アスベスト対策に使える主な補助金制度(2026年版・関東圏)
■ 東京都
■ 横浜市

・含有調査:無料(市が実施)
・除去等工事:費用の2/3(上限300万円)
■ 川崎市
・含有調査:補助(上限あり)
・除去等工事:費用の2/3(上限300万円)
■ 相模原市
・含有調査:費用の1/2(上限30万円)
・除去等工事:費用の1/2(上限300万円)
相模原市 :よくある質問 個人住宅吹き付けアスベスト対策の補助金はありますか。
■ 千葉市
吹付けアスベスト対策補助事業
・含有調査:上限25万円/1棟
・除去等工事:費用の2/3(上限100万円/1棟)
■ さいたま市
・分析調査:上限25万円
・除去等工事:費用の2/3(上限600万円/1棟)
さいたま市:建築物等の解体等工事における石綿(アスベスト)飛散防止対策について
補助対象の考え方
アスベスト補助制度は、すべての工事に適用されるわけではありません。とくに「レベル1(吹付け材)」以外では補助対象外となるケースが多く、マンションでは共用部分のみが対象となります。自治体によっても制度内容が異なるため、事前調査結果を踏まえ、工事計画の初期段階で相談・確認しておきましょう。
まとめ
大規模修繕工事におけるアスベスト対策は、建物を適切に維持管理し、工事に関わる作業員の健康と安全を守るために欠かせない取り組みです。「施工会社まかせ」にせず、発注者である管理組合が適切に関わることで、安全で質の高い修繕工事が実現します。それがマンションの資産価値を守り、快適な住環境を維持することにつながります。
<セミナー講師・記事監修>

小野寺 健(おのでら・たけし)
株式会社ヨコソー 技術支援責任者(技術品質・積算部門執行役員)
一級建築士・1級建築施工管理技士・1級土木施工管理技士・監理技術者 ・既存住宅状況調査技術者・石綿含有建材調査者
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