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居住者が知っておきたい大規模修繕工事の準備 ― 工事の流れと住まいを大切に使うポイント
そこで今回の修繕成功Magazineでは、大規模修繕工事を「我慢の期間」として受け止めるのではなく、「住まいとの向き合い方を見直すチャンス」と捉えるための視点をご紹介します。工事の目的を知り、建物のどこをどのように直しているのか理解することで、住まいを長く大切に使うためのヒントが見えてきます。そしてそれは、ご自身の住まいへの愛着を深めることにもつながるでしょう。
大規模修繕工事を機に、住まいを大切につかうコツをマスター
大規模修繕工事は、単に外観をきれいに整えるだけではありません。建物を「守る」ための作業が順を追って進められます。
- 仮設工事
- 足場仮設工事
- 下地補修工事
- シーリング工事
- 高圧洗浄
- 塗装工事(外壁、上裏、鉄部)
- ベランダ床ほか防水工事
- 補修・清掃
それぞれが連動しており、どれ一つ欠かすことはできません。工事項目ごとに、専門工事職長さんからのアドバイスを交えながら説明します。
Ⅰ. 工事の流れ
1)仮設工事
まずは、工事を安全に、そして効率よく進めるための準備です。
資材置き場を確保して現場事務所を設置し、仮設電源の確保、工事用掲示板の準備などを行います。敷地に余裕があれば、ベランダの植栽の仮置き場も設置します。これからの工事期間中、現場を支える重要な工程です。
2)足場仮設工事
足場仮設工事(架設工事)とは、建物の周囲にパイプや建枠を組み、鋼製布板(足場板)などを渡して作業用のスペースを設ける工事です。足場は、外壁や屋根の修繕・塗装・清掃などを安定した姿勢で行うために欠かせない仮設構造物であり、安全の確保と施工品質の維持という重要な役割を担っています。
枠組足場を組み立てる際は、足場を建物に固定するため外壁にドリルで下穴を開け、アンカーボルトを打ち込みます。この作業中は、大きな金属音や振動が発生します。作業は1スパンあたり30分程度で、場所を移動しながら順に進めていきます。超高層マンションでは、最上階まで足場を設置するのが難しいため、ゴンドラや昇降足場を用いることになります。
職長さんより一言:
足場を組んだりアンカーを打ったりする時は、とても大きい音が出ます。
うるさくて申し訳ありません。事前に工事スケジュールをお知らせしますので、しばらくの間、ご協力をお願いします。高いところに上るのは慣れていますが常に緊張感を保ち、安全第一で作業を進めます。危険な仕事だからこそ、無事に組み上がった時の達成感は大きいものです。
3)下地補修工事
躯体コンクリートや外壁タイルの「浮き」「ひび割れ」「欠損」などを補修します。コンクリートを削ったり穴をあけたりするため、作業中は騒音やほこりが発生します。工事が完了すると外からは見えない部分ですが、ここを丁寧に行わなければ、どんなにしっかり塗装や防水工事を行っても長持ちしません。
職長さんより一言:
建物全般の傷んだところを見つけ出して直す〝建物ドクター〟です。下地は外から見えない箇所なので、あとからやり直すことが難しく、悪いところを丁寧に見極める必要があります。ベランダで作業をしている間は洗濯物が干せません。ほこりも出るので、窓の開閉にはご注意ください。
4)シーリング工事
外壁の目地やサッシ周りに充填されているゴム状の防水材(シーリング)を打ち替える工事です。シーリングはサッシの気密性・水密性を確保し、雨水の侵入を防ぐ防水の最前線。紫外線や風雨によって劣化しやすい部分でもあるので定期的な補修が必要です。
なお、サッシ周りの工事は、網戸が付いたままだと作業の妨げになります。事前に網戸を取り外し、各家庭で室内に保管しておきましょう。
職長さんより一言:
外壁やタイルにシーリング材がつくとなかなか取れないので、周囲を汚さないよう慎重に作業を進めます。新しいシーリングが固まるまでに冬場だと2日はかかります。もし触ってしまったら、全体が固まった後に手直しをするのでお知らせください。ご自身での網戸の取り外しが困難な場合は、現場事務所へ連絡し、作業の代行をご依頼ください。
5)高圧洗浄
シーリング工事と下地・タイル補修工事が完了したら、塗装工事の前に高圧洗浄を行います。これはベランダやバルコニーの天井や壁、床などに長年蓄積した汚れやカビ、劣化して浮いた旧塗膜などを、強い水圧でしっかり洗い流す作業です。この下準備を丁寧に行うことで、新しい塗膜の密着性が高まり、仕上がりの美しさと耐久性がアップします。
6)塗装工事(外壁・上裏・鉄部)
高圧洗浄の後、ベランダの天井や壁、パーティション、樋(とい)の塗装を行います。塗装は「見た目をきれいにする」イメージが強いのですが、本来の目的外壁塗装は下塗り・中塗り・上塗りの3工程があり、工程ごとに十分な乾燥時間が必要です。作業がひと通り終わり手に塗料がつかない状態であっても、塗膜の内部ではまだ硬化(化学反応)が続いていることがあります。「ペンキぬりたて」の貼り紙が外されるまでは、塗装面に手や体、荷物が触れないよう注意しましょう。
ベランダの塗装工事期間中は、サッシや窓、室外機などが汚れないようにビニールで完全に覆って養生します。このため、1週間程度は洗濯物干しができなくなり、ベランダへの出入りもできません。
職長さんより一言:
窓を閉めていても塗料の臭いが気になる場合は、塗装する側から遠い部屋に移動するか、日中だけでも図書館やカフェに避難することをご検討ください。不便ではありますが、体調を第一に考えていただく必要があります。施工中でも、夜間や休工日は養生をはがさない範囲で窓を開けることができます。養生の方法によっては換気扇を使うことも可能です。塗った跡がきれいな直線になっているかどうかが塗装の腕の見せどころ。ぜひ近くで見てみてください。
7)ベランダ床ほか防水工事
ベランダやバルコニー、屋上、共用廊下などの床面防水は、雨漏りを防ぐための重要な工事です。床材に合わせてウレタン塗膜防水や塩ビシート防水などさまざまな工法で作業を行います。塗装工事と同様に、施工期間および乾燥(養生)期間中はベランダへ出入りできません。
職長さんより一言:
廊下やベランダに長尺シートを貼り、シートの端がめくれないように防水シールを打ちます。一日に100㍍ほど施工します。目地の太さを均一に整える化粧作業が腕の見せどころ。細かい作業で重労働ですが、美しく仕上がるとガッツポーズがでます。
8)補修・共用部分の清掃
すべての工程が完了したら、仕上がりの最終確認を行います。
塗り残しや不具合がないか細かい検査をおこない、必要に応じて補修を行います。最後に共用部分の清掃を行い、足場を解体して工事完了となります。
現場代理人より一言:
塗装や防水工事の後、完全に乾く前にうっかりさわってしまったら、また、よじれやはがれに気づいたら、現場代理人にお知らせください。全体が乾いた後に再補修します。
長いようでいて振り返ればあっという間の工事期間。外壁や床の色が変わることで印象が一新されるのも、大規模修繕工事の楽しみのひとつですね。
Ⅱ. 工事期間中に居住者ができること
大規模修繕工事は、複数の工事が同時に進行する複雑なプロジェクトです。施工会社だけで完結するのものではなく、管理組合や居住者の皆さまなど多くの関係者との連携や協力によって円滑に進みます。
居住者ができること・やるべきことは次の通りです。
- ベランダやバルコニーの片付け、整理整頓
- 網戸の取り外し
- アンケートや説明会への参加
- 気づいた点、疑問点の早めの共有
こうしたことがスムーズに進むことにより工事の工程に余裕が生まれ、仕上がりの品質向上にもつながります。管理組合・施工会社・居住者が同じ方向を向いて取り組むことが、大規模修繕工事成功の鍵です。
また、工事をきっかけに、建物の維持管理に関して次のような意識を持つことも大切です。
- 排水口を定期的に清掃する
- ベランダに重い荷物を置きっぱなしにしない
- 雨漏りやひび割れに気付いたら、早めに管理組合または管理会社に報告する
日常の使い方に少し注意を向けるだけで、次回の大規模修繕工事までの建物の状態は大きく変わります。
現場代理人より一言:
工事期間中はベランダの荷物の移動や立ち入り制限など、ご不便をおかけします。網戸は早めに取り外していただきたいのですが、ご自身での作業が難しい場合はお手伝いします。網戸保管袋の貸し出しや、オプション工事で網戸シートの張替えも承ります。作業日の変更を希望される場合は可能な限り調整しますので、ご相談ください。建物の健全性を守るための大切な工程です。ご協力をお願いします。
まとめ
マンションは「住まい」であり「資産」。大規模修繕工事は、資産価値を守るための計画的な投資です。工事のポイントを知ることで建物の構造や劣化の仕組みへの理解が深まり、住まい方も少しずつ変わっていきます。その積み重ねが次の10年、20年の安心につながっていくのです。大規模修繕工事を単なる工事としてではなく、「自分の住まいとの向き合い方を見直すチャンス」として生かしてみてはいかがでしょうか。

㈱ヨコソーでは、大規模修繕工事に関するご質問や見積りのご依頼などを承っております。
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