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マンションの長期修繕計画とは?計画の必要性や見直しのポイントを解説<2> 管理不全から抜け出す第一歩 ~横浜市住宅供給公社に聞く「管理組合伴走支援」の現場~
そこで今回は、そうした悩みを抱える管理組合を支援する、横浜市の管理組合活動活性化支援事業(※1)の現場を取材しました。同事業は横浜市が横浜市住宅供給公社に委託して実施しているもので、相談窓口も同公社が担っています。実際にどのような支援が行われ、その中で長期修繕計画はどのような位置づけとなっているのでしょうか。横浜市住宅供給公社 街づくり事業課の担当者にお話を伺いました。
(※1 横浜市管理組合活動活性化支援事業とは… 管理組合がない、規約が定められていない、など、横浜市が指定する八つの項目のうち、2項目以上が実施できていない管理組合に対し、適正な組合運営や建物の維持・修繕ができるよう専門家を派遣し支援する事業)
どのようなマンションが支援の対象か
横浜市住宅供給公社では、管理組合活動活性化支援事業により、これまで約30のマンションに専門家(※2)を派遣し、管理組合の運営や建物の維持管理の進め方などを支援してきました。多くは1983年以前に建てられた築30~60年程度のマンションで、その約7割が20戸以下の小規模マンションです。管理業務を外部に委託せず、自主管理を続けてきたところも少なくありません。
こうしたマンションでは、長年にわたり一人の理事長や役員が管理を支えてきたものの、高齢化などを理由に退任すると後継者が見つからず、管理組合の運営が一気に停滞してしまうことがあります。
また、もともと賃貸マンションだった建物が後に分譲されたマンションでは、管理規約が整備されていなかったり、管理組合としての運営体制が十分に構築されていなかったりすることがあります。このように、建物の老朽化だけでなく管理組合そのものが十分に機能していない、いわゆる〝管理不全〟の状態に陥っているマンションが主な支援対象となっています。
※2 専門家とは… 次のような方々のうち、主に管理や建物等に詳しい方を派遣します
建物等関係:⼀級建築⼠、建築設備⼠、⼀級管⼯事施⼯管理技⼠、第二種電気主任技術者
管理等関係:マンション管理⼠
権利等関係:弁護⼠、司法書⼠、公認会計⼠、税理⼠
建替え関係:URCAマンション建替えアドバイザー
参考:第8次横浜市住宅政策審議会 第1回マンション部会配布資料
管理不全マンションが抱える課題
多くの管理不全マンションに共通する課題は、将来必要となる工事費と現在の積み立て状況を把握できていないということです。長期修繕計画が何年も見直されていない、あるいは長期修繕計画そのものが作成されていないマンションも存在します。
区分所有者の中には「毎月積立金を払っているから大丈夫だろう」と考える方もいるかもしれません。しかし、将来必要となる工事費と現在の積立金を具体的に比較してみたことはあるでしょうか。計画を精査していなければ、積立金が不足しているのか、あるいは足りているのか、分からないまま年月だけが過ぎてしまいます。築30~40年を迎えると、外壁補修だけでなく給排水管や設備機器など、大規模な更新工事が必要になります。仮に修繕積立金が不足していれば、必要な工事を実施できず、以下のような悪循環に陥ってしまうリスクがあります。
- 不具合の発生・放置:漏水や設備の故障、外壁の剥落など建物の不具合の発生、放置
- 空き家化の進行:住環境が悪化し居住者の転出・空き住戸の増加
- 管理財源の悪化:管理費や修繕積立金の収入が減少
- 管理の限界:建物の維持管理がさらに困難になり、老朽化への対応が遅れる
そうなる前に管理状況を見なおすには、いつ、何から着手すればよいのでしょうか。
どのように支援を行っているか
横浜市住宅供給公社による管理組合活動活性化支援の実績を見てみましょう。派遣された専門家は、支援の1年目に管理状況のヒアリングを行い、課題を整理します。その後、規約の改正・作成、理事会や総会の開催へと段階的につなげています。
このように、同公社の支援事業においては、まずマンションの現状把握からスタートします。相談があったからといって、ただちに長期修繕計画の策定から始めるわけではありません。専門家を派遣して「現在困っていることをじっくりお聞きします。そして、課題を整理して一つずつ解決していくようアドバイスします」(街づくり事業課)。
組合運営の課題の他、「漏水」「設備故障」「外壁の劣化」など、今まさに困っていることを整理し、優先順位を付けて実施計画を立てていきます。
必要な修繕工事計画を一つひとつ積み重ねながら、
・この先どのような工事が必要になるのか
・そのためにはどのくらいの費用を準備しなければならないのか
―をリアルに見通し、管理組合全体で共有します。その積み重ねの先にあるのが長期修繕計画なのです。
自立・自律した管理組合へ
長期修繕計画を策定できれば、将来必要となる修繕工事の内容、時期、概算費用を整理できます。そこで初めて、現在の修繕積立金で十分なのか不足しているのかを具体的な数字で確認し、必要に応じて資金計画の見直しを検討できるようになります。
さらに、長期修繕計画は一度作ったら終わりではありません。5年程度を目安に調査・診断を行い、その結果を踏まえて見直すことが重要です。建物の状態、工事費・人件費の高騰、社会情勢などを反映し、より実態に即した計画へ更新していきます。
横浜市住宅供給公社では「長期修繕計画を作ることがゴールではありません」と強調します。目指しているのは、管理組合が自ら課題を見つけ、話し合い、判断し、維持管理を続けていけるようになることです。
長期修繕計画とは、管理組合が自立・自律した運営を続け、大切な資産であるマンションを将来へ健全に引き継いでいくための〝道しるべ〟なのです。
自治体の支援制度を活用しよう
長期修繕計画の策定や見直しに関しては、専門家への依頼費用や建物調査費用などがかかります。その最初の一歩を後押しするため、自治体ではさまざまな支援制度を用意しています。横浜市では、今回取材した『管理組合活動活性化支援事業』の他にも、目的に応じた支援を展開しています。
管理組合の運営に関して 『マンション・アドバイザー派遣支援』など
建物の修繕・改良に関して 『マンション長期修繕計画作成促進モデル事業』など
建物の将来検討に関して 『マンション再生支援事業』など
長期修繕計画の作成や見直しを検討している管理組合向けには、『大規模修繕工事費用シミュレーター』や『長期修繕計画データ化サービス』などの利用を呼び掛けています。
さらに、2026年度(令和8年度)からは新たな取り組みとして『顧問導入支援制度』がスタートしました。これは、アドバイザー派遣を通算6回利用した管理組合が、派遣専門家による顧問に近い継続的な支援を試行的に体験できる制度です。各種制度の応募要件や募集状況、申請方法は横浜市の公式ホームページをご確認ください。
支援を受ける際の体制に関する注意点
支援を受けるにあたって、知っておきたいポイントが二つあります。
1. 管理組合として相談・検討する
マンションの維持管理は区分所有者全員に関わる問題であり、専門家から助言を受けて最終的に意思決定を行うのは管理組合です。そのため、制度の申込みは管理組合等が主体となるのが原則です。
しかし、管理不全に陥ったマンションでは、そもそも管理組合としてまとまって相談すること自体が難しいこともあります。 そのようなときは、まず危機感を持った区分所有者が相談のきっかけをつくりましょう。専門家から管理組合の運営について助言を受けながら、段階的に話し合える体制を整えていけば問題ありません。
実際に、途中から入居した区分所有者が自ら動いたことで改善につながった例もあります。
2. 単独(個人)で判断・対処しようとしない
例えば、漏水が発生した住戸の居住者が、自宅だけの問題だと思って個人で工務店へ修理を依頼したところ、実際には建物全体の給排水管の老朽化が原因で、大規模な更新工事が必要だと判明したケースがあります。
給排水管は部位や管理規約によって共用部分・専有部分の扱いが異なります。一見すると個人の問題に見えることでも、自分一人で判断・対処しようとせず、まずは管理組合で情報を共有し、組織として対応を検討することが大切です。
管理組合だけで悩みを抱え込まず、公的支援制度を上手に活用する。それが管理不全を脱却し、管理組合の活動を活性化する第一歩になるでしょう。
まとめ
長期修繕計画は、区分所有者がマンションの将来について話し合い、適切な維持管理を続けていくための〝道しるべ〟です。まずは目の前の課題を一つひとつ解決しながら管理組合の活動を活性化し、運営を軌道に乗せましょう。そこからの積み重ねが、長期修繕計画の作成・見直しと、将来を見据えたマンション管理、安心して暮らし続けられる住環境につながっていくのです。
今回取材に伺った横浜市住宅供給公社では、支援制度の窓口業務にとどまらず、住む人の安心・快適な暮らしを守るため、マンションの管理・修繕・将来検討にいたるまで幅広いコンサルティングを行っています。
公正・公平・中立的な立場から管理組合の伴走者として支援を行う同公社街づくり事業課の皆さんは「マンションは区分所有者の皆さん自身の財産です。自分たちで考え、自立した管理組合になっていただくことが何より大切であり、私たちはそのお手伝いをしています。まずは気軽にご相談ください」と話してくれました。
(左から)主事・萩原拓人氏、推進係長・今井恭介氏、主事・隅風渡氏、担当課長・角地永子氏