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マンションの長期修繕計画とは?計画の必要性や見直しのポイントを解説<1>
そこで今回の修繕成功Magazineでは、現在の建設業界の動向を踏まえ、長期修繕計画の必要性と見直しのポイントについて考えます。
長期修繕計画とは
「長期修繕計画」とは、建物や設備の性能を維持するため、将来予定される修繕工事の内容、実施時期、概算費用などをまとめた長期間の工事計画です。
計画期間に必要な外壁補修、防水工事、鉄部塗装、給排水設備更新などの工事を、
- どの時期に
- どのような順番で
- どの程度の費用をかけて実施するか
整理したものです。
国土交通省のガイドラインでは、新築マンションの長期修繕計画を「30年以上」、かつ「大規模修繕工事が2回以上含まれる期間」で作成することを推奨しています。この計画に沿って修繕を重ねるとともに、内容を定期的に見直すことで、修繕が適切に行われているか、積立金の不足リスクはないか、などの状況を早期に把握し、工事実施時の混乱を避けることが可能になります。
長期修繕計画は管理組合が主体となって作成しますが、新築分譲時には、分譲事業者が長期修繕計画案を作成していることが一般的です。ただし、これはあくまで出発点にすぎません。実際の建物の劣化状況や社会情勢に応じ、管理組合主体で継続的に見直していくことが必要です。
長期修繕計画の必要性 ~工事費高騰で「積立金不足」の恐れ~
マンションの築年数が経過するにつれ、長期修繕計画を見直す必要性は高まります。その理由は建設物価や人件費が変動・上昇していることに加え、以下のような要因から工事費総額の増加が予測されるためです。
- 技術者・技能者不足による施工体制や工期への影響
- 働き方改革(時間外労働の上限規制など)に伴う施工体制の変化
- 気候変動(酷暑や集中豪雨)による劣化速度の変化
- 居住者のライフスタイルの変化に伴う、共用設備へのニーズの変化
さらに、中東情勢の緊迫化によるナフサ由来の建材調達難も―アルミ建材、断熱材、塗料、塩化ビニル管、ユニットバスなど―価格上昇や工期遅延に追い打ちをかける懸念材料となっています。
これらを踏まえると、長期修繕計画は「一度つくったら終わり」ではなく、定期的な見直しが欠かせないことが分かります。特に注意したいのは、「見直しを先送りするほど、後々の負担が大きくなる」という点です。〝いま〟対応することをためらった結果、将来、修繕積立金の大幅な引上げ、一時金の徴収、借入れなどを検討せざるを得なくなるよりも、早い段階から継続的に見直しを重ねるほうが区分所有者の理解を得やすく、負担を平準化しやすくなります。
長期修繕計画見直しのポイント
修繕積立金の不足額が大きくなると、どこから修正すればよいのか分からなくなりがちです。積立金の引上げだけを先に決めるのではなく、「急を要する工事はどれか」「緊急性が比較的低く、実施時期を調整できる工事はどれか」を見極めることが見直しの第一歩となります。
ただし、この作業には建築や設備に関する十分な専門知識が必要で、管理組合の理事だけで進めるにはハードルが高いのが実情です。そこで、管理組合のパートナーを探して支援を依頼することをお勧めします。
具体的な相談先としては、
- 管理会社
- 大規模修繕コンサルタント(設計事務所など)
- マンション管理士
- 工事施工会社
などの専門家が挙げられます。自主管理マンションなど「どこに頼めばよいか分からない」という場合は、自治体の相談窓口を活用してみるのも一つの手です。
次に挙げるのは、首都圏の主な自治体相談窓口です。
マンション管理組合に向けた相談窓口
| 東京都 | 分譲マンション総合相談窓口 | |
| 神奈川県 | マンションアドバイザー派遣事業 | ※横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市を除く |
| 埼玉県 | 埼玉県住宅供給公社 | |
| 住まい相談プラザ | ||
| 千葉県 | マンション管理について | |
| 横浜市 | マンションアドバイザー派遣支援 | |
| マンション長期修繕計画作成促進モデル事業 | ※省エネ改修を盛り込む長期修繕計画の作成を検討しているマンション向けの補助金制度 | |
| 川崎市 | マンション管理支援 | |
| 相模原市 | マンション相談について | |
| 横須賀市 | よこすかマンション管理組合ネットワーク | |
| さいたま市 | マンションライフサイクルシュミレーション相談 | |
| 千葉市 | 分譲マンション相談会・アドバイザー派遣 |
自治体によっては、無料または低額で専門家を派遣してくれる制度を整えているところもあります。初期の相談先として活用を検討するとよいでしょう
見直しをするメリット ~「施工会社が見つからない」時代~
前述の通り、建設業界はいま深刻な人手不足や施工体制の変化に直面しています。この影響はすでに現場に表れており、大規模修繕を計画している管理組合が「施工会社が見つからない」と頭を抱えるケースが珍しくなくなっています。見積もりを依頼しても辞退されたり、「着工は早くても2年後」と告げられたりすることもあります。
特に大規模修繕工事では、工事着手までの各段階で理事会の合意や総会決議が必要となるため、準備期間を十分に見込んで計画を進めなくてはなりません。
- 建物調査・診断
- 基本設計・計画策定
- 施工会社の選定・見積比較
- 居住者説明会の開催
- 総会決議
「まだ数年先の話だから」と後回しにせず、5年を目安に長期修繕計画を見直し、早め早めに動くことが、結果として管理組合の選択肢を広げ、優良な施工会社を確保することにつながります。
長期修繕計画の見直しで〝ダウンサイジング〟も
1回目の大規模修繕では部分的な補修で済んだ箇所も、2回目・3回目となると、全面改修や設備の更新が不可欠になります。
例えば、
- 屋上防水の全面更新
- 給排水管の更新・更生
- 消防設備の交換
- 機械式駐車場の更新
- 金物類や掲示板などの交換
などが必要となる時期です。
その一方で、「維持コストが高い割に、現在は使われていない設備」があれば、あり方を見直す絶好の機会でもあります。例えば、空きが目立つ「立体駐車場」や利用状況が変化している「屋上庭園・ビオトープ」「子ども用プール」などは、撤去したり別の用途に変更(※)したりすることで、将来の修繕・維持負担を大きく減らすダウンサイジングが可能になります。
※立体駐車場の平面駐車場や駐輪場、災害時の備蓄スペースへの転換など、共用部分の用途や形状を変更する場合は総会決議が必要です。
修繕周期は「一般論」では決められない
なお、マンションの修繕周期は全国一律ではありません。建物の置かれた環境や仕様によって劣化の速度は異なります。
- 環境の差:海沿いか内陸か、日照や風雨にさらされる条件など
- 仕様の差:建物の基本仕様・構造、使用されている建材のグレード、日常メンテナンスの状況など
近年は高耐久な材料や新しい工法も登場しており、適切な管理を続けていれば、調査や診断の結果、修繕周期を延ばせるケースもあります。そのため「一般的には12年周期だから」と思い込むのではなく、建物調査診断の結果に基づく見直しにより、マンションの実情に合わせた計画に更新していくことが何より重要です。
見直しを継続するための体制づくり
長期修繕計画の見直しを行う上でもう一つ重要なのは、「継続的な検討体制づくり」です。理事会が輪番制の管理組合では、見直し作業の途中で理事の任期が満了し、メンバーが総入れ替えになってしまうことがあります。結論が出ないまま次期理事会にバトンが渡されると、新理事が状況を把握するのに時間がかかったり、検討が白紙に戻ったりして、作業が足踏みしてしまいます。
そこで求められるのが、検討をスムーズに引き継ぐ仕組みづくりです。理事会の諮問機関として「修繕委員会(専門委員会)」を立ち上げることをお勧めします。メンバーの一部を固定する、または任期をずらすなどして委員会が継続的に機能すれば、理事が交代しても検討がストップしません。
また、委員会から居住者に向けて定期的に情報を発信することで修繕の必要性や資金状況などの最新情報を共有でき、マンションの将来像を共有しやすくなります。さらに、検討の過程を引き継いでいく仕組みとして、
- 長期的な検討プロセスの記録・共有
- 議事録や調査資料の適切な保管
- 外部専門家(マンション管理士等)の継続的な活用
などの取り組みが有効です。
検討の過程では、修繕積立金の値上げや工事の優先順位を巡って意見が割れることもあります。そうした場合も、検討の初期からマンション管理士などの第三者(アドバイザー)が参加していると、それまでの経緯を踏まえた専門的な助言を求めることができます。議論の迷走を防ぎ、軌道修正もしやすくなります。
「自分たちの住まいを良くする」という共通の目的に向かって、冷静かつ建設的に話し合いを進めましょう。
まとめ
長期修繕計画は、単に「将来いつ工事をするか」を決めるスケジュール表ではありません。区分所有者全員がマンションの資産価値の維持・保全に努め、快適な住生活を維持するための大切な〝道しるべ〟です。
大規模修繕工事の間近になって積立金の不足に気付いて慌てることのないよう、社会情勢の変化など必要に応じて見直しを行いましょう。何から手をつければよいか迷ったときは、お住まいの自治体の支援窓口や専門家へ相談してみてください。
次号の修繕成功Magazineでは、横浜市の支援制度と活用事例をご紹介します。