限界マンションを防ぐには?高齢化・空き住戸のリスクと管理組合ができる五つの対策

マンションの老朽化と居住者の高齢化という「二つの老い」が進むと、管理組合の担い手が不足し、マンションの適切な維持管理も難しくなることが懸念されます。
管理不全が深刻化し、マンションとしての機能を維持することが困難になった状態は、「限界マンション」と呼ばれることがあります。建物の劣化が止められずに空き住戸が増え、地域の良好な住環境を損なうおそれもあります。限界マンションとなる背景には何があり、そうならないためには、どのような取り組みが求められるのでしょうか。
今回の修繕成功Magazineでは、二つの老いが引き起こすリスクに目を向けながら、管理組合や居住者ができることを考えます。

目次

「限界マンション」とは何か

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マンションは管理が重要 出典:国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」

「限界マンション」とはどのようなマンションなのでしょうか。法律上の明確な定義が設けられた用語ではありません。人口減少や高齢化によって地域社会の維持が難しくなった「限界集落」になぞらえた言葉といえます。 限界マンション化の要因の一つと考えられるのは「管理不全」です。管理組合の運営に支障が生じ、適切な維持管理が行われなくなった結果、居住環境が悪化してマンションの資産価値が低下し、地域の景観や防犯性・安全性を損なうこともあります。

● ● ● ●   コラム なぜ管理不全に陥る?  ● ● ● ●

1-2 マンション管理不全の理由.webp
マンションの管理不全の理由

マンション管理の研究に取り組んできた千葉大学名誉教授の小林秀樹氏(故人)は、管理不全を「管理組合の機能不全により建物劣化が放置されている状態」と定義しました。管理組合の機能不全と、建物の不全状態の二つが同時に生じている状態です。小林氏が実施した調査では「所有者の多くが居住者でもある一般ファミリー向けマンションや団地では、管理不全の報告はなかった、(中略)、日常の管理をしっかり進めていれば、管理不全は、やはり遠い将来のことである」ことが分かりました。ただし、「反社会的団体の関与、修繕積立金の著しい不足、管理組合の内部対立等」は、管理組合が機能不全に陥る兆候の例とも指摘し、専門家への相談を促しています。

出典:マンション管理センター通信 2019年10月号 
小林秀樹「管理不全マンションが身近になってきた」

高齢化が管理組合運営に与える影響

「管理不全マンション」や「限界マンション」の背景には、居住者の高齢化があります。高齢化が進むと、理事のなり手が不足してきます。一部の人に役割や仕事が集中すると、負担が重くなり、継続的な活動も困難になります。特に、長年にわたり理事長の役割を担ってきた人が引退した場合、後継者が育っておらず、管理組合の運営がたちまち滞ることもあります。

理事会や総会が開かれなくなると、必要な議論や決議が行われず、修繕などが先送りされかねません。共用部分の不具合が放置され、建物や設備の劣化が著しく進行すれば、マンションの資産価値が低下し、売却や賃貸に影響が及ぶ可能性もあります。

マンションの空き住戸が引き起こすリスク

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放置された管理不全マンション 出典:国土交通省「マンション総合対策モデル事業」

マンションの空き住戸の増加に加え、所有者との連絡が取れない状態や管理費などの滞納が生じると、維持管理に必要な資金を確保できず、日常の維持管理や大規模修繕工事にも支障をきたすことが懸念されます。

リスクは財政面だけではありません。 一戸建て住宅の空き家では、庭木が道路や隣地にはみ出す、ハチの巣ができる、ハクビシンが住み着く、シロアリなど害虫が発生する、といった問題のほか、不審火やごみの不法投棄などが懸念されます。

マンションの場合はどうでしょうか。 取材したマンションの居住者によると、都内の築古マンションでは、空き住戸のベランダにハトが集まり、近隣の住戸、特に階下の居住者が糞害に悩まされる事例がありました。別のマンションでは、長期入院で無人となった住戸のベランダに置かれた物置で、野良猫が子猫を産んだという話もありました。

こうした状況でも管理組合が自由にベランダへ立ち入って対処できるとは限らず、対応が難しくなります。ベランダやバルコニー、専用庭への立ち入りや物品の撤去には、管理規約や個別事情に応じた確認・対応が必要です。

さらに、漏水が発生した際、原因を調べるために空き住戸内の配管などを確認する必要があっても、所有者と連絡が取れず立ち入ることができなければ、対応が遅れ、被害が拡大するおそれがあります。ベランダに置きっぱなしの荷物や落ち葉などによって排水口が詰まり、雨が降った時に水があふれてしまうケースもあります。

空き住戸があるだけで必ずしも管理不全に陥るわけではありません。しかし、所有者と連絡が取れないと、このように建物全体の維持管理に影響が及ぶリスクが懸念されるのです。

● ●    参考 マンションの空き住戸の割合は?   ● ●


では、マンションの空き住戸は全国にどのくらいあるのでしょうか。現時点では、分譲マンションに限った空き住戸数を直接示す公的な統計はありませんが、参考データをピックアップしました。

【 国土交通省のデータ 】

3 令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状 空室のうち、所有者が不明・連絡不通の戸数割合.webp
所在不明・連絡先普通の住戸があるマンションの割合 出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、「空室なし」が55.4%、所有者が不明または連絡がつかない空室があるマンションは3.3%でした。ここでいう空室は、総戸数の20%以内です。

4 完成年次別不明住戸数割合.webp
所在不明・連絡先不通の住戸割合・完成年次別 出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」

完成年次別の内訳をみると、古いマンションほど所在不明・連絡先不通の住戸があるマンションの割合が大きくなっています。

【 総務省のデータ 】

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空き家数及び空き家率の推移 出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査結果」

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査 共同住宅の空き家についての分析結果」によると、2023年の全国の空き家は900万2,000戸で、総住宅数に占める割合は13.8%と過去最高を記録しました。このうち、共同住宅の空き家は502万9,000戸で、全体の55.9%を占めています。
この「共同住宅の空き家」には賃貸用等の空き家が9割以上であるため、502万9,000戸という数字が、そのまま分譲マンションの空き住戸数を示すわけではありません。

管理組合運営で取り組むべき五つの対策

空き住戸によるリスクを抑え、管理不全を防ぐために、管理組合が取り組める対策を考えてみましょう。

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管理組合で情報を共有しましょう 出典:公益財団法人マンション管理センター「マンション管理の基礎知識」

① 長期修繕計画を見直す

長期修繕計画は、建物や設備を適切に維持し、将来必要となる修繕費用を見通すための〝道しるべ〟です。作成して終わりにせず、建物の劣化状況や工事費の変動、修繕積立金の残高などを踏まえて、定期的に見直しを行うことが不可欠です。また、見直しの結果をまとめたら、建物の現状と今後必要となる修繕について、区分所有者に分かりやすく伝えてください。建物の〝現在地〟を知ることが、日頃の維持管理に関心を持つきっかけになります。

② 管理規約や所有者情報を整備する

管理規約や使用細則を点検し、管理費などの滞納時の対応、賃貸化した住戸の所有者の連絡先、緊急時の連絡方法などを確認しておきましょう。 区分所有者名簿や居住者名簿は、必要な情報のみを適切に把握し、利用目的や管理方法に配慮して作成・更新します。所有者が変わった際の届出方法や、緊急時の連絡先を更新する手順も、あらかじめ整えておきましょう。

③ 外部専門家を活用する

理事のなり手が不足している場合や、修繕計画の見直し、建物の再生など専門的な判断が必要な場合は、マンション管理士や建築士など外部の専門家に相談する方法があります。 管理組合の運営そのものが難しくなっているマンションでは、外部の専門家などが管理者を務める「外部管理者方式」の活用も選択肢の一つです。例えば東京都では「外部管理者方式等による管理適正化の取組」で事例を交えた詳しい情報を、横浜市では「ヨコハマ分譲マンションポータル」で外部管理者方式や専門家との顧問契約に関する情報などを提供しています。外部に任せる際は、業務範囲や費用だけでなく、利益相反への対応や管理組合による監督方法も確認しておきましょう。専門家の力を借りながらも、区分所有者が必要な判断を行える体制を保つことが、健全な管理運営につながります。

④ デジタル化で運営負担を減らす

管理規約や法令上の手続きを確認した上で、オンライン会議や電子アンケート、ウェブ上での資料配布などを取り入れると、総会や理事会への参加、意見の収集がしやすくなります。例えば、マイクロソフトやグーグルなどには、専門知識が無くても電子アンケートを作れる無料の機能があります。 一方、デジタル機器の利用が難しい人もいます。紙の資料や対面での説明も組み合わせるなど、誰もが情報を受け取れる方法を整えてください。

⑤ 情報共有を強化する

管理組合の活動や財政状況、修繕計画の進捗などを分かりやすく伝え、区分所有者がマンションの現状を把握できるようにします。具体的には、竣工図書や契約書、修繕履歴などの資料を整理して保管し、理事が交代しても引き継げるようにすること、紙の資料を電子化してバックアップを取ることが挙げられます。必要な情報をいつでも確認できる状態にしておけば、次の大規模修繕工事の準備や、長期修繕計画の見直しにも役立ちます。さらに、区分所有者や居住者がマンションの運営に関心を持つきっかけとなる情報発信を工夫してみてはいかがでしょうか。総会や避難訓練への参加を呼びかけたり、住民同士が顔を合わせる機会を設けたりすることで、住みやすいコミュニティーづくりにも役立ちます。

関連記事:162

● ● ● ●   コラム 所有者が取り組む、相続後の住戸管理への備え  ● ● ● ●


マンションの「空き住戸化」を防ぐために、住戸の所有者ができる備えがあります。所有者が亡くなった後、相続や住戸の管理が滞らないよう、元気なうちに財産の管理方法や相続後の希望を整理し、備えておくことです。

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国土交通省、日本司法書士会連合会、全国空き家対策推進協議会「住まいのエンディングノート」

横浜市にある「相続支援センター横浜 合同会社ハルライフ」(代表行政書士・田代さとみ氏)では、終活に関する支援として、①エンディングノート作成  ②財産管理  ③任意後見  ④遺言執行  ⑤死後の事務手続きの受託―の五つを行っています。

このうち「エンディングノートの作成」では、財産一覧だけでなく不動産の登記名義や登記識別情報・登記済証(いわゆる権利証)の保管場所などを確認し、記録しておくことを勧めています。これは、相続後に住戸の所有者や連絡先が分からなくなる事態を防ぎ、空き家予防と適切な管理につなげるための備えの一つです。田代代表は、「こうした手続きは元気だからこそできること。安心して暮らすための準備です」と話します。

エンディングノートを無料で配布している市区町村も多いので、お住まいの自治体のホームページなどで確認し、活用してみてください。

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取材協力:合同会社ハルライフ 
代表社員―行政書士の田代さとみ氏(写真左)、業務執行社員―宅地建物取引士・行政書士の田村亜弓氏

まとめ

限界マンション化を防ぐには、建物の老朽化への対応に加え、管理組合が継続して機能する体制を整えることが欠かせません。居住者の高齢化による担い手不足や空き住戸の増加など、マンションが抱える課題を早めに把握し、できることから取り組んでいきましょう。 大切なのは、管理組合の運営を一部の役員だけに任せるのではなく、区分所有者一人ひとりがマンションの現状に関心を持ち、必要な活動を支えていくことです。それが、将来にわたって安心して暮らせるマンションを守ることにつながります。

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