タワーマンションの災害対策とは?上層階での被災に備える

地震発生!タワーマンションは「長周期地震動」で大きく長時間揺れ続けることがあります。しかし多くの建物は耐震性が高く、損傷が軽微なら自宅での「在宅避難」が求められています。そのために必要な自助・共助の備えを進めましょう。地震の直後はエレベーターを使わないこと、トイレを流さないことなどを覚えておきましょう。

目次

大規模地震や豪雨、竜巻など自然災害が発生すると、マンション、特にタワーマンションではどのような被害が予想されるのでしょうか。東京都内でも20階以上の高層マンションが多く立地する品川区や中央区、港区は、マンションで防災対策を検討する際の参考となる「手引き」を発行し、この中で、マンションの居住者には〝在宅避難〟を勧めています。この在宅避難のためには一人ひとりが自宅で備える「自助」と、居住者がお互いに助け合う「共助」の取り組みの強化が必要です。今回の修繕成功magazineは、この「手引き」などを参考に、タワーマンションでの災害対策を紹介します。

タワーマンションで被災すると起こること

―地震直後はすぐに水を流さない―

②長周期地震動とは.webp
(長周期地震動とは 出典:気象庁HP

タワーマンションは厳しい耐震基準をクリアして建築されています。建物の構造は耐震構造・制振構造・免震構造などがあり、いずれも地震に強く、損傷があっても軽微であることが多いものです。一方で、高層建物では周期の長いゆっくりとした大きな揺れ「長周期地震動」のリスクがあります。一般に、地震が発生したらテーブルの下などに潜って頭を守ることが基本ですが、長周期地震動では高層建物が共振して上層階で大きな揺れになり、テーブルや家具が振り回されるように動いてしまうことがあります。

タワーマンションではキャスター付きの家具を避けるかストッパーを掛ける、室内に安全な空間を確保する、など特有の備えが必要です。また、2011年3月に発生した東日本大震災では、震源から約700km離れた大阪市まで長周期地震動が伝わり、高層ビルが揺れました。遠く離れた場所の地震にも警戒する必要があります。

タワーマンションで被災すると想定される被害は、

① 長周期地震動 
建物が長時間にわたり船のようにゆっくり大きく揺れ、家具や什器の転倒、つり下げたブラインドの大きな揺れ、食器の落下・破損などの被害が発生します。高層階の方がより大きく揺れる傾向にあります

②ライフラインの停止 
停電、断水、都市ガスの停止、固定電話の不通・携帯電話回線の混雑、下水管破裂など

③水問題 
高架水槽の破損、給水ポンプの停電で生活に必要な水が途絶えるなど

④トイレ問題 
給排水ポンプが停電し作動しない、排水管が破損して汚水の排水ができず逆流し、下層階の排水口からあふれ出すことも

⑤ゴミ問題 
食品や簡易トイレ使用後のゴミの一時保管

⑥ドア問題 
玄関ドアの他トイレ、浴室、洗面所のドア変形による閉じ込め、避難通路や備蓄倉庫のドアが開かない、停電でエントランスのオートロックが解錠できないなどの被害

⑦機械式駐車場の停止 
震度5以上の揺れまたは部品の落下があった場合は、点検終了まで使用不可。豪雨時に排水ポンプが停止すると、機械式地下駐車区画の車両の水没

―などがあります。このほか、

⑧帰宅困難者への対応
公開空地やロビーの開放、救出救助活動、避難活動、初期の復旧作業

⑨物資の不足
交通マヒやエレベーターの停止による食料品や生活用品の調達困難

―なども危惧されます。

なかでも停電や機械系統の不具合でエレベーターが停止すると、生活への影響は深刻です。フロア間の移動経路は階段に限られ、上層階の居住者は自宅外への出入りが困難な〝高層難民〟となってしまいます。2016年の熊本地震では多くのマンションでエレベーターが停止し、全て復旧するまで1週間程度かかりました。タワーマンションではどのような備えをしておくべきなのでしょうか。

各フロアに備蓄品をストックできる場所を設けたり、数フロアごとにトランシーバーやシート型ホワイトボードといった情報伝達ツールを配置したりして備えているマンションもあります。エレベーターが使えなければどうするか、実際に階段を使って最上階への上り下りを体験し、復旧までの暮らし方を管理組合で話し合っておきましょう。

 

 

タワーマンションの備え

  調整画像_③高層マンションで起きやすい設備の被害.webp
(「在宅避難3日間運用ノート)より 出典:JAFIA)

地震の発生後、状況が落ち着いたら在宅避難の拠点となる居室内の設備の状況を確認しましょう。一般社団法人日本建築設備診断機構(JAFIA)発行の『在宅避難3日間運用ノート』から主なチェックポイントを紹介します。

 

キッチン廻り
給水・排水状態、換気扇の作動を確認してください。部屋を離れる場合は給水の元栓を閉めてください。元栓はパイプシャフト(PS)内の水道メーターすぐそばにあります。
自動でガスが止まった場合は、ガスのマイコンメーターの復帰操作を行います。コンロなど室内のガス機器を止めた後、メーター上部にある復帰ボタンのキャップを外してボタンをゆっくり押し込み、ゆっくり手を放してください。約3分後に赤ランプが点滅して安全確認が始まり、終了すると点滅が消えてガスが使えるようになります。3分以上点滅が続く場合は、ガス栓の閉め忘れがないか確認してやり直します。それでも復帰しない時は、ガス会社などに連絡し異常がないか調べてもらってください。ボンベ式コンロを使用する際は、窓を開けて換気に注意してください。
④ガス マイコンメーター.webp
(ガスのマイコンメーター 出典:日本ガス協会)


居室廻り
エアコン、照明器具、感知器類、スプリンクラーなどの損傷を確認してください。冷蔵庫やテレビは転倒していませんか。破損があれば使用を中止し、コンセントを抜いておいてください。

トイレ廻り
便器、タンクの破損、漏水を確認してください。タンク内の水がなくなっていたら漏水しているかもしれません。共用排水管に異常があったり外部地盤が液状化で沈下したりした場合は、トイレを使用できません。

浴室・洗面・洗濯機廻り
給水・排水状態を確認してください。バスタブや防水パンに損傷がないか、漏水していないかを見ます。マンション全体で排水制限がある場合は水を流すことができません。

ベランダ廻り
ベランダの給湯器、エアコン室外機の脱落や転倒、配管の損傷がないか確認してください。

メーターボックス・PS・玄関廻り
室内の分電盤やガスのマイコンメーターなどを確認してください。PS内から水漏れがあり、配管からの漏水を見つけたら、急いで管理組合に連絡してください。


▼ライフラインの被害の中で気づきにくいのが排水管の損傷です▼
断水していた水道が復旧し通水が始まると「これでひと安心」と水を流したくなりますが、ちょっと待って。排水管や排水ポンプ、共用の下水管は無事でしょうか。破損した場合は水が流下せず、逆流して下層階の住戸の風呂場やトイレから噴き出す事があります。浴槽にためた水も流せません。管理組合で地元自治体に問い合わせるなどして安全を確認してから水を使うようにしてください。その間のトイレは簡易トイレや避難所・公園などに備えてあるマンホールトイレを使用します。
「トイレに水は流さない 」と覚えておきましょう。

⑤ー1災害時のトイレ、どうする(マンガ).webp
⑤ー2災害時のトイレ、どうする(マンガ).webp
(『災害時のトイレ、どうする?』 出典:国土交通省水管理・国土保全局下水道部

 

在宅避難 「自助」と「共助」

多くのマンションは高い耐震性があるので、「自助」と「共助」の備えがあれば、地震発生後も住み慣れた自宅で暮らし続ける在宅避難が可能です。そこで、マンションの日常生活についてLCP(Life Continuity Plan、 生活継続計画)をつくっておくことをお勧めします。これは緊急時の企業の事業継続計画BCP(Business Continuity Plan)を日常生活に応用したマニュアルづくりです。
ここで東京都が作成した防災ブック『東京くらし防災』 『東京防災』を参考に、「自助」と「共助」の備えを挙げました。

●自助の備え
<食料、日用品のストックの見直し>
災害時の食料としてカップ麺を備蓄することが多いのですが、季節ごとに内容を見直していますか。夏の台風災害で空港に一晩足止めされた経験のある人は、「停電で空港全体のエアコンがストップしてしまい、蒸し暑い中では熱いカップ麵を食べる気にならなかった」と話していました。夏場は、常温で解凍して食べられる冷凍食品があると便利です。日常用の食料を少し多めに買い置きし、使った分だけ買い足すローリングストックでバランスよく蓄えましょう。
食料以外ではトイレットペーパーやゴミ袋、常備薬などが欠かせません。懐中電灯や電池、ラジオ、卓上コンロ、ポリ袋、ウエットティッシュ、ペットの餌なども一週間分をまとめて保管しておくと安心です。

⑥ローリングストックしましょう.webp
(できれば1週間分をローリングストックしましょう 出典:農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」

 

<ドアの耐震化>
大規模地震では、マンションの建物は無事でも玄関のドア枠や錠前がゆがんで開かなくなり、室内に閉じ込められることがあります。地震の揺れを感じたら身の安全を確保し、ドアや窓を開けて避難経路を確保しましょう。玄関ドアだけでなく備蓄倉庫や非常口のドアが開かなくなると、せっかくの備えも活用できません。対策例としては、特殊加工を施した低摩擦材プレート「タイシン(旧・アケルくん)」をドアとドア枠の間に取り付けてドアを耐震化することなどが可能です。

⑦「アケルくん」でドアを耐震化.webp
(「タイシン(旧・アケルくん)」でドアを耐震化(株)ビュードHPより)

 

●共助の備え
<ライフラインの確認>
マンションのライフラインの状態を確認しておきましょう。
l   断水や停電にはどのような対応ができるのか
l   自家発電を備えている場合は何日継続できるのか
l   ゴミ置き場は何日でいっぱいになるのか
l   誰が防災倉庫の鍵を開け、防災備品をどのように使うのか
l   安否確認や負傷者の搬送、初期消火などの活動の手順は
l   救助要請や情報の収集・発信をどのように行うのか
l   マンホールトイレはどこの公園や学校に整備されているのか

<居住者相互の確認>
ソフト面では、マンション居住者の現状を知ることが、いざという時の助けになります。
管理組合は、防災目的であることを説明して居住者にアンケートや聞き取り調査を行い、
l   要配慮者:乳幼児、高齢者、障がい者、外国人など災害時に助けが必要な人の存在
l   災害時に協力できる人材:防災、医療、福祉、設備、栄養などの知識や経験を持つ人の存在
などを把握しておきましょう。防災訓練でマンション内の人が相互に顔を合わせることも備えの一つです。

<エレベーターや給排水設備の停止>
エレベーターや給排水設備は、地震だけでなく大雨でも停止することがあります。2019年10月に発生した台風19号による豪雨では、川崎市内のタワーマンションで地下の高圧受変電設備が冠水し、マンション全体が停電してしまいました。オール電化のマンションです。エレベーターはもとより水道やトイレ、電気製品も一切使用できない非常事態に陥ってしまいました。地震だけでなく風水害も念頭に、LCP(生活継続計画)を考えておきましょう。
⑧一般的なマンション施設の概要図.webp
(一般的なマンション施設の概要図 出典:品川区『高層マンション 防災対策の手引き』

 

自治体などの対応

それでは、冒頭で紹介した品川区の『高層マンション 防災対策の手引き』と、中央区の『いま、始めよう。マンション防災』を見てみましょう。

<東京都品川区>
⑨高層マンション防災対策の手引き(品川区).webp
(東京都品川区『高層マンション防災対策の手引き』)

20階以上の高層マンションが多く立地する東京都品川区は、2011年3月に発生した東日本大震災を含む過去の地震での実例を踏まえた『高層マンション 防災対策の手引き』を作成しました。この中で区は、災害発生直後の避難所は物資や情報を求める被災者で溢れかえることを想定し、建物の損傷が少ないマンションでは居住者に在宅避難を勧めています。

事前に確認するべきこととして、
l   居室内の危険個所はどこなのか(P18)
l   エレベーターに乗っているときに地震が起きたらどうするか(P19)
l   水道・電気・ガスが止まったら何をすべきか(P20)
などを挙げ、どう備えると良いかを分かりやすく説明しています。
マンションに住む人は一度は必ず読んでおきましょう。

<東京都中央区>
⑩いま、始めよう。マンション防災(中央区).webp
(東京都中央区『いま、始めよう。マンション防災』)


品川区と同様に中央区でもマンション向け防災パンフレット『いま、始めよう。マンション防災』を作成し、在宅避難を推奨しています。
家族みんなで読み、地震が発生した場合の初動対応として、
l   火元を確認する
l   出口を確保する
l   エレベーターは使用しない
l   トイレを流さない
ことなどを確認しましょう。
中央区では震災時のルールを周知するチラシも作成し、ホームページからデータで提供しています。
⑪ー1エレベーターは使用できません.webp ⑪ー2トイレは使用できません.webp
(チラシの例 出典:中央区ホームページ

 

<内閣府>
日本にいる外国の方々には、母語による情報伝達が不十分になりがちです。そこで内閣府は、災害情報などを知る多言語アプリやWebサイトを紹介するチラシ『災害時に便利なアプリとWEBサイト』を作成し、データで提供しています。ホームページからダウンロードしてロビーの掲示板など多くの人の目に留まる場所に貼り、事前のアクセスを呼び掛けましょう。
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(出典:内閣府 災害時に便利なアプリとWebサイト

l   「川崎市防災ポータルサイト」はこちら
l   「横浜市マンション防災」はこちら
l   「相模原市防災対策」はこちら
l   ヨコソーの「防災と減災、個人と管理組合。最優先にやるべき地震対策と備えておくべきこと」もご参照ください。
l   ヨコソーの「地震でエレベーターに閉じ込められた時の対処法」もご参照ください

 

まとめ

多くのマンションは高い耐震性があり、住み慣れた自宅で暮らし続ける在宅避難が可能であり、自治体からも求められています。そのためにはハード面とともにソフト面の備えを進めましょう。まずは自助、そして共助。緊急時の備えがあれば、あなたのマンションは「逃げ出す場所」から「地震が起きても住み続けられる場所」になります。

ヨコソーでは災害発生時に備えて防災に関する記事もこれまで修繕成功Magazineでご案内してきました。よろしければこちらもあわせてお読みください。

被災経験者アンケートから見る震災時に自助で不足する物とマンション管理組合での対策

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