【チェックリスト付き】地震に備えるマンション管理組合の役割とは?修繕・耐震・判断ポイントを分かりやすく解説

大規模な地震が発生すると、耐震性能が確認されたマンションであれば居住者は無理に避難所へ移動せず、原則として住戸内で生活を続ける「在宅避難」が推奨されます。お住まいのマンションは、在宅避難場所としての備えが十分でしょうか。水や食料は居住者各個人で備蓄し、管理組合としては発電機やAEDなどを備えておきたいものですが、それだけでは不十分。在宅避難を前提とした計画(LCP:Life Continuity Plan、生活継続計画)を策定しておくことが重要です。例えば、エレベーターは使えるのか。トイレの水を流してよいのか。地震がおさまった後も住み続けて大丈夫なのか。そして、これらの判断は誰がどのような手順で行うのか――。今回の修繕成功Magazineでは、地震発生時に管理組合が果たすべき役割とLCP策定について解説します。

目次

地震発生時、マンションで問題になること

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地震直後のリスクと生活継続リスク 一般社団法人 新都市ハウジング協会HPより

大規模地震が発生すると、マンションでは個人で対応できない問題が起こり、判断の多くは管理組合に委ねられます。管理組合と専門家との連絡網や指揮系統、設備停止時の対応ルールがどこまで整理できているかにより、被害の拡大防止と早期復旧が左右されます。地震発生直後は次のような問題が同時に起こります。

地震発生時、マンションで問題になること

停電が発生すると、マンションの共用設備にさまざまな影響が出ます。例えば、エレベーターの停止や、給水ポンプが止まることによる水の供給停止などです。また、機械式駐車場は車の入出庫ができなくなります。下水管が破損するとトイレは使えません。タワーマンションや高層階ほど生活への影響は深刻です。

共用設備を「使っていいのか」「安全確認を待つべきか」の判断がつかない

理事会から正確な情報が提供されないと、共用設備を「使っていいのか」「いつまで安全確認を待つべきか」「誰が決めているのか」と不安に感じ、混乱が生じます。

理事や管理会社と連絡が取れず、指揮系統が不明確になる

地震発生時に理事や管理会社の担当者が不在ということも考えられます。居住者が独断で行動してしまうと、二次的な被害につながる恐れがあります。安全の確認が取れないまま設備を使用すると、設備の損傷や事故を招く可能性があるためです。

建物の安全性を誰も即断できない

地震がおさまった後、建物の外観上は問題がなさそうでも、構造部や設備に重大な損傷が生じている場合があります。専門家による確認が終わるまで、居住継続の可否を判断できません。

マンションの地震対策で管理組合が担う役割

このような災害時のシナリオを想定して策定するのがマンション防災マニュアルであり、その先の生活継続を見据えた計画(LCP :Life Continuity Plan)です。災害発生時に管理組合が担う役割は、まず共用部分の管理主体として建物や設備の安全を確認し、使用制限を判断すること。そして、マニュアルに沿って管理会社やメンテナンス会社と連絡を取り、正確な情報を居住者に伝えることです。管理組合が発する情報が居住者の安全に影響することを自覚したうえで対応する責任があります。

管理組合の役割を一つずつ見ていきましょう。

建物・設備の安全確認を手配する

エレベーターや機械式駐車場が作動しないときはメンテナンス会社に連絡し、点検・復旧作業を手配してください。ただし、地震直後の混乱が続く中ではただちに駆けつけてもらえるとは限りません。まずは担当者と連絡を取り状況を伝え、最大いつごろまで待てばよいのか見通しを聞いてください。

使用制限(立入禁止、設備停止など)を判断する

給水管や排水管が損傷したり停電でポンプ設備がストップしたりすると、水道は断水し、下水道は汚水を流すことができなくなります。マンションの設備に問題がなくても、トイレを使用できない場合があります。接続する下水道管が破損した地域では、排水を流下できないためです。損傷に気付かずトイレを使用すると、下の階の部屋で汚水漏れや逆流が発生する恐れがあります。管理組合は自治体のホームページなどで地域の下水道設備の被害状況を確認し、使用の可否を周知してください。

管理会社・専門家・メンテナンス会社との連絡窓口になる

停電が解消してもエレベーターや機械式駐車場が作動しないとき、居住者が個別にメンテナンス会社へ連絡すると、かえって混乱が大きくなります。勝手に操作すると、挟まれ事故などの重大アクシデントにつながりかねません。設備の復旧は、専門家による点検・安全確認が完了してからという原則を平時から周知し、専門家との連絡窓口は管理組合または管理会社に一元化しましょう。

地震は平日昼間など理事が外出している時間帯にも起こります。臨時理事会を招集できないことを想定し、エレベーターやトイレを「使ってよい/使わないように」と判断する暫定判断者をあらかじめ決めておく必要があります。管理会社に役割を代行してもらう場合は、どこまで判断を委ねるのかなども決めておきましょう。

居住者に対して正確な情報を伝える

地震がおさまった後は建物の安全確認が必要です。できるだけ早期に管理会社または設計事務所、工事施工会社と連絡を取り、手配の状況を居住者に伝えましょう。ヨコソーくん.webp

地震に備えて― 管理組合が検討すべき具体策

次にお示しするのは、管理組合が地震に備えて検討すべき具体策の例です。管理組合でマンション防災マニュアルや生活継続計画(LCP)をつくるとき参考にしてください。状況判断の主体は基本的に理事会(理事長)です。

~マンション管理組合・理事会のやることチェックリスト~

【事前準備・平時に理事会がやっておくこと】

■ 建物・専門家体制の確認

  •  建物が新耐震・旧耐震のどちらか把握している
  •  耐震診断の実施有無・結果を確認している
  •  建物の安全確認を依頼できる▷管理会社▷建築士/設計事務所▷施工会社―の連絡先を一覧化し、大規模地震の発生時に緊急対応が可能か確認している

■ 指揮系統・判断体制の整理

  •  地震発生時の最終判断者(原則:理事長)を明確にしている
  •  理事長不在時の代理順位を決めている
  •  理事会が招集できない場合の暫定判断ルールを決めている
  •  管理会社に委ねる判断範囲を整理している

■ 設備停止時の対応ルール

  •  エレベーター停止時の対応手順を確認している
  •  機械式駐車場の操作禁止
  •  理事会が招集できない場合の暫定判断ルールを決めている
  •  停電・断水時のお知らせや周知方法を決めている

■ 水道・下水道の使用ルール

  •  下水道の安全確認が取れるまで水道やトイレの使用を制限する方針を共有している
  •  安全確認を①誰が②どこに確認し③どう判断するか―を決めている

■ 記録・周知

  •  マンション防災マニュアルや生活継続計画(LCP)を作成している
  •  理事・管理会社で内容を共有している
  •  居住者向けに基本方針を周知している
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【初動対応・地震発生直後に理事会がやること】

■ 安全確保・初期対応

  •  人命最優先で行動することを確認
  •  建物への立入制限が必要か判断する
  •  エレベーターを原則停止する

■ 建物・設備の状況把握

  •  管理会社へ連絡し、状況確認を依頼
  •  建築士・施工会社等に安全確認を要請
  •  共用部(外壁・廊下・階段等)の目視確認

■ 設備使用の判断

  •  機械式駐車場は使用禁止とし、メンテナンス会社に対応を手配
  •  下水道の安全確認が取れるまで水道・トイレの使用を制限
  •  使用可否のお知らせ・周知方法


こちらのチェックリストは以下のボタンからもダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。

マンション管理組合・理事会のやることチェックリスト

ダウンロードはこちら

管理組合として後悔しないために

発災時に管理組合としての対応が後手に回らないよう、情報を多方面から収集して備えましょう。国や自治体、民間団体のWebサイトには有益な地震対策が多数紹介されています。一年に一度は目を通し、最新情報を入手することをお勧めします。

1)自治体の制度を活用する

マンション管理組合の防災力を高めるため、自治体の制度を活用しましょう。

◆東京都

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東京都マンションポータルサイトより

東京都では、停電時でも水の供給やエレベーターの運転に必要な最小限の電源の確保(ハード対策)や、防災マニュアルを策定し、居住者共同で様々な防災活動を行う取り組み(ソフト対策)によって、自宅での生活を継続しやすい共同住宅(マンション等)を「東京とどまるマンション」として登録し、普及啓発(を図っています。この取り組みを参考に、「いざという時に何をどう判断するのか」をイメージしておきましょう。

◆横浜市

横浜市は防災対策を実施しているマンションを「よこはま防災力向上マンション」と認定し、災害に強いマンションの形成と周辺地域を含めた防災力の向上を図っています。この認定制度をみちしるべに、マンションの防災力アップに取り組んでみてはいかがでしょう。

4 よこはま防災力向上マンション認定制度.webp
横浜市における行政と管理組合が連携したマンション防災の取組」国土交通省HPより

また横浜市では、防災・減災に関する講義やグループワーク「よこはま防災研修」を実施しています。各地域の防災に関する取り組みやセミナーなどを通じて、地域の防災活動を進める上で参考になる知識(自助・共助)を提供しています。(※2026年度の申込締切は2月3日(火)まで)。

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よこはま防災研修 横浜市HPより

市内のマンション管理組合の取り組み事例をまとめた資料も公開されています。管理組合による本部機能の設置や自治会と合同の防災管理グループづくり、東日本大震災時に特に役立った機材などが紹介されています。

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町の防災組織活動事例集「ヨコハマの『減災』アイデア集」横浜市HPより

2)民間団体情報を活用する

発災直後は自助・共助が最も重要です。マンションにはさまざまな背景をもつ居住者が暮らしており、要援護者や災害弱者への配慮が欠かせません。日本語を母語としない方に向けては内閣府が提供する「災害時に便利なアプリとWEBサイト(多言語)」が、視覚・聴覚などに困難のある方への支援では、次に挙げる民間団体のWebサイトが参考になります。

◆聴覚障害者はこんなことに困っています

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全日本ろうあ連盟HPより

◆耳で聴くハザードマップ

8 耳で聴くハザードマップ.webp
JAVIS 日本視覚障がい情報普及支援協会HPより

◆災害支援情報―障害のある方への災害支援・避難配慮

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国立障害者リハビリテーションセンターHPより

マンション防災マニュアルや生活継続計画(LCP)は一度策定したら終わりではなく、定期的に見直して更新・改善することが大切です。理事会の新旧役員交代の引継ぎ時には、全員で内容を確認しましょう。加入している地震保険の更新のタイミングでは、補償内容の見直しとともに、建物が損傷した場合の復旧方針や防災性向上のための設備改修についても話し合っておくとよいでしょう。

まとめ

地震後の混乱を防ぐためにも、マンションの安全が確認できたら在宅避難を基本とすることを平時から共有しておくことが大切です。居住者個人が独自の判断で行動するのではなく、管理組合からの情報を確認し、指示に従うことが安全の確保につながります。管理組合がどのような役割を担い、緊急時にどのような判断が行われるのかを平時から情報共有しておきましょう。

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