【賃貸オーナーのためのマンション防災】オーナーがやるべきマンションの防災対策とは?

目次

災害大国といわれる日本では、多くの自然災害が毎年のように起こっています。近い将来、特に甚大な被害をもたらすといわれている首都直下型地震は、今後30年以内に70%の確率で発生するとされています(2022年5月時点)。全国で毎年のように発生している記録的豪雨による河川の氾濫や土砂災害の被害も記憶に新しいところです。

マンションで想定される災害リスク




地震が発生した場合、新耐震基準が導入された1981年6月以降に建築確認申請を受けたマンションであれば倒壊する恐れはほとんどありません。しかし、高層マンションであれば上層階ほどゆっくりと大きく揺れやすかったり、停電によりエレベーターが停止すると高層階の入居者が孤立するといった状況が考えられたり、高層マンションでなくとも排水管の損傷により上階で流したトイレの汚水が下階住戸に漏水するなど、マンション特有の被害は様々あります。他にも、記録的豪雨や大雨により1階や地下に集中している設備や施設が水没すると、一部の住戸のみではなく全戸へ影響が及ぶといった点も設備がまとまっているマンションだからこそのリスクといえます。

また、基本的に避難所は家屋倒壊等の被害により自宅で生活できなくなった方の避難場所であるため、倒壊リスクの低いマンションの住民は自宅で避難生活を送る『在宅避難』を想定している自治体がほとんどです。しかし、建物は無事でも災害発生後は電気・水道・ガス・通信などのライフラインやごみ収集、物流などの日常機能の復旧までは時間がかかりますので、日常生活を取り戻すまではマンション内で助け合って避難生活を送る必要があります。

これらのマンション特有の災害リスクに対して重要となるのが、事前に災害に備えておく『日常の備え』なのです。

 

災害への備えは賃貸オーナーの大切な役目と同時に価値向上にもつながる

入居者自身で災害に備えてもらうことももちろん大切ですが、入居者の安全を守るためには建物の修繕やメンテナンス、消防設備点検、防災備蓄など賃貸オーナーとしても災害への備えは大切です。

特に、入居者同士の関係が希薄になりがちな賃貸マンションやアパートでは、いざという時の防災備蓄や災害時の対応は賃貸オーナーの大切な役目です。災害時も入居者が安心して在宅避難を継続できるよう日頃から備えておきましょう。

また、災害発生リスクが高まってきている昨今では、災害への備えや対策がきちんとされているマンションと分かれば賃借希望者にとっては優先度が高くなるはずですし、されていないマンションと比較した際に資産価値の面でも差が出ると考えられます。

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災害が起きても焦らない!賃貸オーナーとしてやるべきこと

「備えあれば憂いなし」という言葉があるように、いざという時に落ち着いて対応できるように 日常の中で備えておくことが大切です。ここでは賃貸オーナーがすべき日常の備えについてご紹介します。

 

建物・設備のメンテナンス

地震によるひび割れや崩壊や大雨時の漏水発生などさまざまな災害リスクに備えて、外壁や屋上、バルコニーなどを定期的に修繕しておくことが大切です。普段は見えにくい給排水管などの設備も、発災時の混乱した状態ではすぐには復旧できませんので、地震で断水や漏水とならないよう定期的にメンテナンスしておきましょう。

修繕周期は、マンションの立地・周辺環境、経年劣化の度合い、建設した年代の違いなどによっても異なりますので、建物診断の結果をもとに適切なタイミングで修繕・メンテナンスを行うことが重要です。

建物診断について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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消防設備点検の実施・報告

マンションにおいて火災が起きた場合に特に注意したいのが「逃げ遅れ」と気密性の高さによる「一酸化炭素中毒」です。鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のマンションは、木造と比較すると耐火性が高い造りとなっているからこそ、上記についても考える必要があります。 

マンション火災への備えとして賃貸オーナーがすべきことは、『消防設備点検』(消防用設備等点検)を必ず実施することです。消防法により機器点検は6ヵ月に1回、総合点検は年1回、点検結果の報告は3年に1回行うことが義務付けられています。

住居への立ち入りが必要となる火災報知器の点検の際には必ず参加してもらうよう入居者に呼びかけましょう。また、バルコニーや廊下などの避難経路を荷物などで塞がないように普段から周知することも大切です。

 

防災備品の備えと周知

先ほどもご紹介したように、災害時、自宅に被害がない場合は本当に避難所が必要な人のためにも『在宅避難』が求められているため、戸建て住宅と比べて倒壊する恐れの少ないマンションでは防災備品の備えが大切です。しかし、せっかく備蓄した防災備品や災害時のルールなどが入居者に知られていなかったら意味がありません。

備蓄場所の記録やいざという時の対応についてまとめた防災マニュアルなどを作成し、入居者に配布することも一つの手です。災害時は限られた防災備蓄を全員が利用できるようにルールを定め、いざという時の対応について事前に共有しておきましょう。

 

共用部分に設置したい!防災備品と日常の備え

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災害発生時、『在宅避難』をしているマンションで万が一、ライフラインが止まっても以下の防災備品を備えておけば、在宅避難生活の大きな助けとなります。

 

発電機

マンションの停電に備えて、発電機を備蓄しておくと安心でしょう。発電機は燃料に軽油やガソリン、LPガスなどを使用しますので、保管スペースが必要になる上、保管量によっては危険物保管用の設備が必要となります。発電機を備蓄する場合は、いざという時に使用できるように定期的に動かしておくのも大切です。 

なお、マンションには「非常用電源」が備わっていることがほとんどですが、これは災害時に非常用エレベーターや消防設備などの設備を一時的に稼働させるため最低限の電力をまかなうもので、生活のための電力や長期間の停電には使用できません。

 

飲料水・生活用水

災害発生時は地域一帯で断水が起こるだけでなく、マンション給水管の破損や電気を使用した給水システムの場合停電による断水も発生します。家庭での備蓄水の量は大人1人あたり1日3リットルが目安といわれており、最低3日分~1週間分備蓄しておくことが望ましいとされていますが、その他にも手洗いやトイレ、洗濯等のための生活用水も必要です。

私たちの生活には欠かせない水を災害時にも安心して確保できるよう、賃貸オーナーは入居者自身での備蓄を呼びかけましょう。また、事前にマンションの給水方式を確認した上で、受水槽に直接蛇口を取り付けて災害時に飲料水として利用できるようにする『非常用水栓』などを設置することも有効です。水道本管からの直結であればマンション敷地内にある『共用水栓』(清掃や水やりのための立水栓・散水栓など)からも給水が可能です。

しかし、先述の通り、入居者へこれらの情報が共有されていなかったら意味がありません。共用設備などはオーナー自身又は管理者で管理を行っている場合が多くありますので、災害時にすぐ入居者が使えるようにしておく必要があります。過去の災害では、断水時もマンション敷地内で給水ができることを知らずに、多くのマンション住民が給水所に殺到し、スーパーやコンビニなどの水が売り切れるという事態が起こったケースもありました。マンションの給水方法を確認した上で、断水時の対応や給水のルール、災害時の情報共有の方法などについて事前に周知しておくことが大切です。

 

マンホールトイレや災害用トイレ

特にマンションにおいて、地震による排水管の損傷は大きな問題です。排水管の損傷に気付かずに水を流してしまうと配管の破損箇所から漏水を起こしたり逆流する恐れがあるため、地震発生後は排水管に損傷がないと確認できるまでは水を流したりトイレを使用することが出来ません。

災害時はトイレが使用できないことを想定して、入居者共用で使用することができる「マンホールトイレ」を備えておくと良いでしょう。マンホールトイレは下水道マンホールの上に簡易的に便座やパネルを設けた仮設トイレの一種です。一般的な仮設トイレと比べても、普段使用しているトイレに近い環境を迅速に確保できるのが大きな特徴です。

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マンホールトイレ(イメージ)

マンホールトイレの場合はどうしても屋外に設置することになったり、設置場所がマンホールありきとなってしまいますが、最近では水を使わず、臭いも漏らさず、排泄物を密閉し、微生物(最近)も遮断する新しいラップシステムを採用したトイレ『ラップポン』などの新しい製品も販売されていますので、このような便利なものを備えておくことができると居住者の方もより安心できそうです。

 

土のう・止水板

台風や大雨などの水害に備えて、エントランスや地下への入口などに土のうや止水板を設置できるよう準備しておきましょう。実際にエントランスが浸水し エレベーターが停止した事例も発生しており、入居者が階段の上り下りが難しい場合には身動きが取れなくなる可能性もあります。特に前面道路よりも低くなっている階層には、早めの浸水対策が必要です。

 

防災備品の購入費は経費計上が可能

マンションでの被災生活に欠かせない防災備品ですが、備品単価が10万円未満の防災備品については備蓄時に事業供用があったものとして『消耗品費』として経費計上が可能です。青色申告をしている個人事業主のオーナーの場合は、30万円未満の備品を経費計上できる特例(少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)もあります。

防災備品は使わないに越したことはありませんが、たとえ使用していなくても経費として計上でき節税につながるため、居住者の安全・安心を向上させるのみでなく賃借を検討されているお客様向けのPRポイントといった面も含めて賃貸オーナーの方にとって導入しやすいのではないでしょうか。
少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例詳細条件

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まとめ

今回は、賃貸オーナーとしてやるべきマンションの防災対策についてご紹介しました。賃貸オーナーとして入居者の命を守るためには、日頃からマンションの災害リスクを理解し、災害に備えることが重要です。

賃貸オーナーがやるべきマンション防災についてより詳しく知りたい方は、『賃貸オーナー様向け防災ハンドブック』をぜひご活用ください。今回の記事でご紹介した以外にも、賃貸オーナー向けのマンション防災対策を詳しく解説しています。災害発生時いつでも確認できるようチェックリストにまとめて記録・保管することも可能です。
すべて無料でダウンロードいただけますので、マンションの防災力向上にぜひお役立ていただけたら幸いです。

 

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